20081006 日本経済新聞 夕刊
日本の介護保険制度はドイツを参考につくったという。とはいうものの、給付面を中心に違いも多い。
ドイツの介護保険料は、給与の一・九五%(子供がいない人は二・二%)を労使で負担する。年齢制限はなく、公的医療保険の加入者など全員が強制加入。その代わり若くして要介護状態となっても給付が受けられる。
介護必要度は三段階に分けられ、それぞれに給付上限額が決まっている。施設に入所して介護を受ける場合の上限はそれぞれ月千二十三ユーロ(一ユーロ=約一四三円)、千二百七十九ユーロ、千四百七十ユーロ。在宅介護では四百二十ユーロ、九百八十ユーロ、千四百七十ユーロだ。
実際にかかる費用はこの給付額を超えることが多いため、「部分保険」ともいわれている。例えば最重度で施設介護の場合、利用者自身が負担しなければならない費用は月二千ユーロを超えることも多い。日本の介護保険の方が手厚いともいえる。
家族やボランティアによる介護を確保できる人は、現金給付という選択肢もある。給付額は月二百十五―六百七十五ユーロ。現物給付すなわち事業者による介護サービスと組み合わせることもできる。
現金給付を選べば、自宅で生活を続けることができるうえに、本人・家族に金銭的負担が生じず、家計の足しにもなる。現金が他の目的に使われてしまう恐れはあるものの、保険制度としての出費も少なくて済む。
介護保険導入翌年の一九九六年には受給者の六割がこの現金給付を選択し、今日まで最も多い給付形態となっている。日本では女性に介護者としての役割を強要することにつながるという理由で現金給付は実現しなかったが、ドイツでは家族介護と介護保険が相互に支え合う構図ができている。
しかしドイツでも女性の社会進出や生活様式の多様化が進み、家族による介護が難しくなってきている。現金給付の割合も五割を切った。要介護者の絶対数の増加とともに、費用がかさむ施設介護を選ぶ人が増え、保険財政を圧迫している。
先の介護制度改革では、ボランティアの活用などと並び、介護している家族に職場で六カ月までの休暇が保障されることになった。ドイツは今後も家族による在宅介護を推進することで、保険財政の安定を図る方針のようだ。
(ドイツ在住ジャーナリスト 吉田 恵子)
日本の介護保険制度はドイツを参考につくったという。とはいうものの、給付面を中心に違いも多い。
ドイツの介護保険料は、給与の一・九五%(子供がいない人は二・二%)を労使で負担する。年齢制限はなく、公的医療保険の加入者など全員が強制加入。その代わり若くして要介護状態となっても給付が受けられる。
介護必要度は三段階に分けられ、それぞれに給付上限額が決まっている。施設に入所して介護を受ける場合の上限はそれぞれ月千二十三ユーロ(一ユーロ=約一四三円)、千二百七十九ユーロ、千四百七十ユーロ。在宅介護では四百二十ユーロ、九百八十ユーロ、千四百七十ユーロだ。
実際にかかる費用はこの給付額を超えることが多いため、「部分保険」ともいわれている。例えば最重度で施設介護の場合、利用者自身が負担しなければならない費用は月二千ユーロを超えることも多い。日本の介護保険の方が手厚いともいえる。
家族やボランティアによる介護を確保できる人は、現金給付という選択肢もある。給付額は月二百十五―六百七十五ユーロ。現物給付すなわち事業者による介護サービスと組み合わせることもできる。
現金給付を選べば、自宅で生活を続けることができるうえに、本人・家族に金銭的負担が生じず、家計の足しにもなる。現金が他の目的に使われてしまう恐れはあるものの、保険制度としての出費も少なくて済む。
介護保険導入翌年の一九九六年には受給者の六割がこの現金給付を選択し、今日まで最も多い給付形態となっている。日本では女性に介護者としての役割を強要することにつながるという理由で現金給付は実現しなかったが、ドイツでは家族介護と介護保険が相互に支え合う構図ができている。
しかしドイツでも女性の社会進出や生活様式の多様化が進み、家族による介護が難しくなってきている。現金給付の割合も五割を切った。要介護者の絶対数の増加とともに、費用がかさむ施設介護を選ぶ人が増え、保険財政を圧迫している。
先の介護制度改革では、ボランティアの活用などと並び、介護している家族に職場で六カ月までの休暇が保障されることになった。ドイツは今後も家族による在宅介護を推進することで、保険財政の安定を図る方針のようだ。
(ドイツ在住ジャーナリスト 吉田 恵子)
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