20080921 日本経済新聞 朝刊

 夫の友人が「元本確保型」といわれる変額年金保険に加入したそうです。米国に端を発した金融危機で相場が下落基調にあるだけに「元本確保」という言葉は魅力。仕組みをファイナンシャルプランナー(FP)に聞きました。
 夫 なんだか複雑そうな商品ですね。
 FP 基本は「年金保険」で自分が払った保険料をもとに、将来年金のように毎月一定額を受け取れます。保険料は主に投資信託で運用され、図Aのように運用成績に応じて受け取れる年金額が変わるので「変額」といわれます。変額年金のうち人気なのは運用が不調でも元本が保証される「元本確保型」です。
 変額年金の販売額は二〇〇七年度で約三兆七千億円と五年前の約三・八倍。運用環境の悪化で、通常の投資信託から元本確保型変額年金に資産を移す人もいるようです。
 夫 運用が好調なら年金が増えて、不調でも元本確保って、いいことずくめですね。
 FP まず注意したいのは、元本確保は満期まで加入した場合だけだということ。中途解約すると手数料で元本割れになることもあります。「途中でより有利な商品が出ても預け替えが難しく、インフレにも対応しにくい」(南山大学の吉本佳生准教授)
 次に、本当に年金原資を大きく増やせるかどうかも考えなければなりません。「仮に運用環境が良くても、コストが高い結果、通常の投資信託に比べて運用益が大きくなりづらい」(FPの野田真さん)という指摘も多いのです。
 運用期間中は保険契約関係費と資産運用関係費がかかり、年に三%前後にもなります。それを上回る利益を上げないと、年金額は増えません。
 でも保険会社は損が出ると元本を保証しなくてはならなくなるので、株式よりリスクが小さい債券の比率が高い資産配分になっていることが多いのです。債券は中長期では株式よりリターンも低めになりがち。また外国債券の運用で為替ヘッジをつければそのコストで国内での利回りとあまり変わらなくなります。
 債券の比率が高過ぎる商品は「最低保証額を上回る確率はほとんどないと考えた方がよい」(年金数理人でアカラックス代表の坂本嘉輝さん)。運用目標額に達すると最低保証金が切り上がる商品も増えていますが、高い目標額に達する可能性がどれくらいかも考えなければなりません。運用目標に達した時点で運用を止める商品もありますが「その後の値上がりで利益を得る機会を逸してしまうことになる」(「生命保険の『罠』」などの著書を持つ後田亨さん)との指摘もあります。
 妻 通常の投信にもコストは高いものがあるわよね。
 FP 変額年金ほどではありません。またインデックス(指数連動)型のバランス投信で、最近、販売手数料が無料で信託報酬も年〇・八%前後のものもでてきています。
 グラフBはそうした低コストのバランス型投信と、変額年金で運用した場合の利益を比較したもの(各資産ごとの期待リターンは野田さんによる)。増やすことが主目的なら変額年金よりも投信が向いていることがわかります。

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