20080826 日本経済新聞 朝刊
衆院選をにらんで消費税率の早期引き上げが難しい情勢のなか、二〇〇九年度税制改正でたばこ税の増税が焦点になりつつある。増税分を基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げる財源に充てる案が有力だが、実際に回せるのは増収の半分未満にすぎないとの見方が浮上している。国と地方の間には、たばこ税収を四対六の割合で分ける原則があるからだ。
価格2倍なら…
「たばこ一箱の価格を現在の二倍(六百円)以上に」。自民党の中川秀直元幹事長や民主党の前原誠司副代表ら超党派の議員連盟は、現在は一箱当たり約百七十五円のたばこ関連税を大幅に引き上げるよう主張する。消費税増税を当面避けながら基礎年金の国庫負担割合も引き上げ、国民の健康も守れる、というわけだ。
BNPパリバ証券の試算によると、たばこ関連税を一箱当たり約二百八十円増やして価格を現在の約二倍にすれば、税収が一兆五千億円増える。仮にすべてが基礎年金に回れば、国庫負担割合を二分の一に引き上げるために必要とされる二兆三千億円の大半を賄えることになる。
ところが、常に財源確保で駆け引きをしている国と地方の間では、この「皮算用」が容易に成り立つ状況にはない。総務省幹部は「たばこ税を増税しても、国と地方との配分はこれまで通り四対六。半分以上は地方の一般財源だ」と話す。
たばこ税収を巡る国と地方の取り分が決まったのは一九八五年。たばこ税の前身である「たばこ消費税」を導入する際、当時の旧大蔵省と旧自治省が地方財源の充実という原則のもと、過去の専売納付金や地方たばこ税の配分比率を考えて四対六の割合とした。
地方財政を所管する総務省としては「よほどの理由がなければ原則は曲げられない」(幹部)という。
地方の歳入は〇六年度まで七年連続の減収となり、債務残高も約二百兆円に膨らんだ。現在のたばこ関連税からの地方税収は地方交付税交付金を含めて一兆三千億円超。増税すればたばこの消費量も減ることが確実だ。「苦しい財政事情のなかで貴重な財源を減らしたくない」との思いが地方側ににじむ。
わずか数千億円
社会保障を目的とした新しいたばこ関連税をつくる考え方もあるが、国には苦い経験がある。九八年に国鉄などの債務を返済するために新設された「たばこ特別税」。この際には一時、国の取り分が増えたが、旧自治省は強硬に配分を戻すよう要求。〇〇年には従来の比率に戻された。
財務省幹部は「たばこ税を増税するときには、国と地方の取り分の比率の見直しも検討すべきではないか」と漏らす。仮にたばこ税収の取り分がこれまで通りなら、国が使えるのは数千億円にすぎず、財源確保には程遠い状況になるからだ。
膨張し続ける社会保障費を賄う安定財源をどう確保するかは、税制抜本改革の基本的なテーマだ。政治的な背景で消費税論議の先送りが続くなか、たばこ税の「分捕り合戦」が早くも見え隠れするのは、改革がいっこうに進まない日本の窮状を象徴しているともいえる。
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