20080824 日本経済新聞 朝刊
中国の四川省に続き、日本の東北地方でも大きな地震が発生した。地震による自宅の倒壊や火災のリスクに改めて関心が集まっているが、意外と知られていないのが、火災保険に入っていても地震に関しては本格的な補償は受けられないこと。ではどんな保険に入ればいいのか、どの程度の費用がかかるのかを検討した。
地震に本格的に備える商品の代表格は、政府と民間が運営する地震保険。普通の火災保険では、地震で自宅が火事になっても、お見舞金的なもの(地震火災費用保険金)が出る程度だが、地震保険に入っておけば、もっと大きな補償を受けられる。
補償額に制限
いくつか特徴がある。単独では入れず必ず火災保険に付け加える形をとる。また対象は原則居住用の建物だ。さらに補償額に制限がある。火災保険でかけた額の三―五割で、建物は五千万円、家財は一千万円が上限。建物に二千万円、家財に一千万円の火災保険をかける人は、地震保険が建物六百万―一千万円、家財が三百万―五百万円になる。
保険料は、地震発生の可能性や予想される被害の大きさなどをもとに都道府県別に決まっている。表Aは木造家屋に一千万円(一年契約)をかけたケースの料金表だ。非木造はこの半分程度になる。どの保険会社の火災保険に付帯させても、同じ料金体系が適用される。
実際の支払額は全損、半損、一部損の三段階に応じて決まるため、常に「満額」が出るとは限らない。この点は後述の共済も似た仕組みだ。また地震保険には一回の地震当たりの総支払額に上限があり、かなり大規模な被害が起きた場合、保険金額が減額される可能性もある(安心クイズ3択参照)。
地震保険は火災保険の五〇%までしかかけられないが、それでは不安という声もあり、民間損害保険会社は、もう五〇%分を上乗せして一〇〇%補償を可能にする特別な商品も扱い始めた。例えば損害保険ジャパンの「新家庭保険」(凍結水道管の修理費なども補償する火災保険)に入れば、一〇〇%補償も受けられる(料金は表B・(1))。地震への補償が五〇%まででいいなら、もっと安い火災保険で済ますこともできる。
地震保険以外の選択肢も見てみよう。全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)の「建物更生共済」は、火災共済金に地震などを補償する自然災害共済金などを合わせた内容。地震に対する補償は火災の半分だ。満期金(満期共済金)があるほか、事業用建物にもかけられ、さらに料金が全国一律であるなど、地震保険とは異なる点もある。
基本的には農業従事者向けだが、それ以外の人向けの利用枠もある。枠が空いていない場合も、出資金を払えば使える。
共済では、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)にも「自然災害保障付火災共済」という商品がある。地震補償は火災の五分の一で地震保険より低い設定。これも料金は全国一律だ。出資金を払えば原則だれでも使える。
二つの共済について、二千万円の「火災保険」とそれに応じた地震補償を付けた場合の保険料を、表B・(2)(3)に示した。JA共済連は高めだが、満期共済金があるなど他とは商品内容が違い単純比較はできない。
以上見てきたように、地震に対する保険は火災と切り離してかけることはできないのが原則。例外的に地震だけに備えられるのが少額短期保険(ミニ保険)事業者の日本震災パートナーズ(東京・千代田)が扱う「リスタ」。世帯人数に応じかけられる保険金が決まっており、最低は「一人以上」の三百万円、最高は「五人以上」の九百万円(いずれも全壊)。あまり大きな額はおりないがその分、料金は安い(表B・(4))。
ローン一部免除
そのほかユニークなのが、三井住友銀行の「自然災害時返済一部免除特約付き住宅ローン」。地震などで家が倒壊した場合などに災害の程度に応じて一部、返済額を免除する。
様々な商品を紹介したが、どれを利用すればいいだろうか。もちろん全く使わないという考え方もあるが、「地震大国」に暮らす以上、持ち家のある人は備えがないのは不安だろう。とはいえ、負担できる保険料には限度もある。ここではおおまかに三つのニーズ別に選択肢を考えてみた。
第一に、できるだけ負担を抑えたい場合。日本震災パートナーズの「リスタ」や全労済の自然災害保障付火災共済、さらに地震保険のうち火災保険の三割(下限)をかけるタイプなどが候補だ。第二に、その程度では不安という人は地震保険で火災保険の五割(上限)をかけるのがいい。「リスタ」にも入り補償を拡充する手もある。
第三に、できるだけ完全に近い備えを望むなら、地震保険の「一〇〇%タイプ」を選べばいいだろう。ただ費用はかなりかかる。
ちなみに、第一、第二の選択肢をとると、地震被害のうち保険でカバーできない部分が出てくる。税制面で、その部分に応じて税金をある程度軽くする制度(雑損控除など)もある。税務署などに確認し、活用してほしい。
どの選択肢にせよ、保険料はできるだけ安い方がいい。別稿では地震保険の費用節約法を紹介した。
(編集委員 清水功哉)
【図・写真】能登半島沖地震では多くの木造家屋が倒壊した(2007年3月)
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