20080820 日本経済新聞 夕刊
地球温暖化が関心を集め、原油価格高騰が家計を脅かす。こんなときこそ「地球と家計にやさしい」省エネ生活。一昔前のケチケチ節約と違い、昨今は「無理せず楽しく」がキーワードだ。
東京都練馬区の小沢ひとみさん(42)は、経済産業省や環境省などが主催する第一回省エネコンテストの家庭部門で内閣総理大臣賞を受賞した。一万件を超える応募から選ばれた、いわば省エネの金メダリストだ。
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小沢さんの省エネのコツは三つある。まずローテク省エネ術。本や雑誌に書いてある省エネ法でこれぞと思うものを実践する。冬に障子をはずして太陽光を取り入れ布団を干したり、やかんの中に赤貝の殻を入れ、沸騰時のかたかた音で消し忘れを防止したり。
数回やって無理なく続けられそうなものだけを生活に取り入れる。冷蔵庫に食品を入れる際は、奥までよく見渡せるよう、上から見てM字型になるよう並べた。扉の開閉回数が減るだけでなく、詰め込み防止にも役だった。
二番目がエネルギーの効率利用だ。暖房をガスファンヒーターに切り替えてから光熱費が安くなった。「ガスは温めるのが得意」と、電気圧力釜で四十五分かかっていた炊飯をガスにした。火から下ろして布でつくった「鍋帽子」に入れておくと加熱時間は十分ですんだ。もちろん、電気には電気のメリットがある。「上手に組み合わせることが大切とわかった」
三番目が省エネナビの活用だ。ナビは電気使用量や料金などが即座にわかる、小型の表示器。洗濯や食器洗いでどのくらい電気を使うか。洗い方で変わるのかも試した。記録をとると小沢家の一日の電気料金は平均約百円。これより多いと何か原因がある。洗濯乾燥機に六十六円もかかるとわかり天日干しに切り替えた。
ところが数値表示の面白さに夢中になり、夕方になっても明かりをつけず息子からケチと責められた。「節約のしすぎで生活の質が落ちては続かない。無理せず続けられる適量を知ることが大切」と苦笑いする。
小沢さんは生活雑誌「婦人之友」の読者でつくる友の会のメンバー。約八十年の歴史を誇る会では、熱を効率的に利用する鍋帽子を考案し、水道はサインペンの太さにだす、ゴミの量をできるだけ減らし、生ゴミから堆肥(たいひ)を作る――といった研究に取り組んでいる。「無駄のない適量の生活」がモットーだ。
財団法人省エネルギーセンターの市川昭彦省エネ教育推進部長は「以前の省エネは我慢、ケチケチが目立ったが、最近は無理なく楽しく続けられる工夫へ変わっている」と話す。
環境省は二〇〇五年から地球温暖化防止の国民運動「チーム・マイナス6%」を展開中だ。一九九〇年に比べCO2を六%削減する運動で、インターネットを通じて募ったメンバーは現在、約二百三十五万人だ。
〇七年からは一人一日一キログラムのCO2削減に取り組んでもらう試みも始めた。一人一日の排出量の約六分の一だ。チャレンジ宣言には、冷房温度を二六度から二八度にすると八十三グラム、買い物の際にマイバッグを持ち歩き省包装の野菜を選んだら六十二グラムなど三十九の省エネチェック項目が並ぶ。「協賛企業なども募り、楽しみながらやってもらうのが狙い」(国民生活対策室の松本行央主査)だ。
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経済産業省は消費者が電気製品を選ぶ際に省エネに関心をもってもらおうと〇〇年から日本工業規格(JIS)で、電子レンジなど十六製品の省エネラベリング制度を始めている。国の省エネ基準をクリアしているものには緑の、未達成のものにはオレンジのマークを付け、達成率と年間消費電力を表示する。
〇六年十月からは中でも消費電力の大きいエアコン、テレビ、冷蔵庫について店頭で統一省エネラベルの添付に努めるよう企業に義務づけた。省エネ基準の達成率に応じて最高の五つ星から最低の一つ星で表し、年間の目安電気料金も表示する。
特定非営利活動法人グリーンコンシューマー東京ネットの後藤浩成理事は「冷蔵庫とエアコンは格段にエネルギー効率があがっている。十年以上前の製品は買い替えたほうがいいだろう」と話す。買い物から日々の暮らし方まで、工夫の余地は大きそうだ。
(編集委員 岩田三代)
日本のエネルギー消費量は二〇〇五年度には原油換算で約四億一千万キロリットル。石油ショックが起きた一九七三年度に比べ、運輸部門が二・一倍に、家庭やオフィスなど民生部門が二・六倍に伸びた。工場など産業系はほぼ横ばいだ。
家庭でのエネルギー消費を用途別にみると、最も大きいのは家電などを動かす動力。給湯用、暖房用がこれに続き三つで九割を占める。家電で消費電力の大きいのはエアコン、冷蔵庫、照明器具、テレビの四つで、計七割に達する。
省エネタイプの製品開発は進んでいるが、電化製品の増加や高機能化、核家族化による世帯数の増加で、消費電力は減らなかった。CO2排出量の約九割はエネルギーが起源で、家庭からの排出量は九〇年より三〇%増えている。
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【図・写真】省エネコンテストで総理大臣賞をとった小沢ひとみさん
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