■介護は“地域力”か
石川誠委員(初台リハビリテーション病院理事長)は、リハビリ専門医の立場から問題点を指摘。医療と介護の橋渡しになる「維持期のリハビリ」が円滑に進むような制度になっていないことや、主治医とケアマネジャーとの連携が不十分であることなどを挙げた。さらに「医療と介護を一体化して包括的にやろうという意識改革が遅れている。ケアマネジャーには大変優秀な人と、『ちょっとどうかな』という人がいて、玉石混交だ。医療と福祉が一緒にできるムードが高まると、介護保険はもっと良い制度になる」と述べた。
石川良一委員(稲城市長)は、“地域力”を強調した。「会議の検討事項に『自助・公序・共助』とあるが、防災活動などでは『自助・共助・公序』の順だ。地域力、つまり“共序”をいかに見直して再構築するかが重要だ」と指摘した上で、稲城市の「介護ボランティア制度」を紹介。「これは、『お互いが助け合う』という共助の再構築をしていく一つの試金石になっている。医療も含めて『負担が限界点に達している』と言われる中、地域でフォローする体制が求められている」と述べ、“地域力”を介護や福祉の分野に生かすことが、「介護保険における負担と給付」問題の解決策の一つになるとした。
太田差惠子委員は、利用者の視点から介護制度の問題点を指摘した。太田委員は、離れて暮らす親のケア(遠距離介護)を考える特定非営利活動法人(NPO法人)「パオッコ」の理事長で、働きながら故郷の親を介護する人たちへの支援活動を展開している。
太田委員は「介護というと『身体的介助』を思い付くが、介護とは人の生き方をサポートすること。生き方が多様化する中、情報も分散しており、どこにどんなサービスがあるのか、たどり着くのが大変な状況だ」と指摘。介護に関する正しい情報の集約化や、“情報の仲介役”となるケアマネジャーのサービスが利用者に分かりやすい環境の整備を求めた。
■厚労省の意向に沿った発言?
続いて、駒村康平委員(慶應義塾大経済学部教授)が、経済学の視点から今後の議論の方向性や論点を具体的に示した。「3つの視点がある。どういう時間軸で議論するのか、理想の姿を目標に据えて議論するのか、現行制度からベターなものを積み上げて議論するのか」
その上で、介護保険制度を構成する“3つのセクター”として、「本人・家族・地域というセクター」「財政と給付のセクター」「サービス提供者・労働サイドのセクター」を挙げ、それぞれに関連する論点を具体的に提示。「資源の確保ができなければどうしようもない。経済学の視点から議論したい」と述べた。
まるで最終報告書の取りまとめのような“仕切り”を見せる駒村委員に、前田雅英・座長(首都大学東京都市教養学部教授)が“待った”をかけた。「先ほどは『あいうえお順』と申し上げたが、(発言者が)あっちに行ったりこっちに行ったりするのも不自然なので、わたしから一言申し述べさせていただく」と断った上で発言した。
「わたしがこの会議に呼ばれた理由の一つは、20年間母親の介護をしてきたからだろう。介護保険制度ができる前、在宅介護には大変なコストが掛かった。家内は仕事を辞めて母親を介護したが、その間のバトルは大変なものだった。介護保険制度ができて本当に良かったと思うが、うまくいっている面もあれば問題点も多くある。(問題解決に向けて)いろいろなレベルから議論していただきたいが、法律家にとって、“革命”は駄目。格好良い議論はできないが、一歩ずつ良くしていくこと、一歩ずつ進むことが何よりも大事だ」
前田座長が割り込んで発言した後、再び「あいうえお順」に戻って各委員が発言。袖井孝子委員(お茶の水女子大名誉教授)が「公的サービスの限界」に切り込んだ。
「介護保険でどこまでカバーすべきかをきちんと議論すべきだ。何でここまで介護保険でやらなければいけないのか、その本質的なものは何かを洗い直す必要がある。『自分でやればいいのではないか』と思うものもある。もう少しシンプルに設計し直して、何もかも取り込まない方がいい。そうしないと、ますます財政的に厳しくなってしまう。稲城市のように“地域力”、NPOとかボランティアとか、インフォーマルなケアを使っていかないと、やれない。無理だ。家族がどこまでやるべきか、ある程度の痛み分けが必要で、国民の側も我慢すべきだ。『利用者本位』とか『権利』などが広がってくると、歯止めが効かなくなる」
袖井委員の発言を、老健局の鈴木康裕・老人保健課長は大きくうなずきながら聞いていた。
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