20080818 日本経済新聞 朝刊

A選択権は労働者側にあり
 育児休業制度を利用しようと考えている男性会社員。なんとか一カ月間だけ取得しようと申請したところ、会社側は「有給休暇が三十日間残っているため、有給休暇の消化となる」と説明する。ただ有給休暇を使い切ってしまうと、病気などいざという時に困りそうだ。自分で選択はできないのだろうか。
    × × ×
 育児・介護休業法では、生まれた子供が一歳に達するまでの間に育児休業を取得できることを定めている。二〇〇五年施行の法改正で、保育所に入所できない場合などは子供が一歳半に達するまでの間に取得できるようになった。
 だが男性の取得はなかなか進まない。厚生労働省の調査によると、昨年度の取得率は女性の八九・七%に対し、男性は一・五六%。同法では会社は休業期間を有給とする義務はなく、現在は雇用保険からの給付が休業開始前賃金の五割相当額にとどまることも一因だ。ただ「育休を取得したい」という男性は三割に上るなど、期間中一回しか利用できない育休を利用したいという声は少なくない。
 こうした男性が育休を申請した際、会社側が残っている有給休暇の消化の取得を優先させることは可能だろうか。労働問題に詳しい渡辺岳弁護士は「育休も有給休暇も対象者が請求することで会社が与える義務が生じる。どちらを利用するかは労働者側に選択権がある」と説明する。
 労働基準法で定められている、出産予定日六週間前から取得できる女性の産前休業も育児休業と同様に選択できる。産前休業は通常、出産手当金として賃金の六割相当が健康保険から支給されるが、女性が「有給休暇を消化したい」と申請すれば、会社側は特別な理由がない限り、認める義務がある。「会社側が有給休暇よりも産前休暇を優先させるという規定を設けることは労基法違反となる」(渡辺弁護士)という。
 ただ、こうした選択は休暇に入る前に確定しなければならない。育児休業などを取得中に「やはり有給休暇にしたい」と主張しても、渡辺弁護士は「すでに休業期間中は労働義務は免除されている状態になっているため、有給休暇を選択する余地はなくなる」と注意喚起している。
 有給休暇は労基法では二年まで繰り越しが可能なうえ、未消化分を長期病欠時に充当する会社もある。どちらを選ぶか十分検討する必要がありそうだ。
ポイント
(1)育児休業も有給休暇も労働者の申請で会社が付与する義務
(2)育児休業を取得後に有給休暇への変更はできない





------------------------------------------------