20080818 日本経済新聞 朝刊
うなぎ登りのガソリン価格は、自動車を生活必需品とする家計にとって悩みの種だ。燃費が良い新車に買い替えたくても代金の全額を現金やローンで手当てするのが重荷と感じる人もいるだろう。「クルマは自分が手に入れるもの」という発想を切り替え、部分的に借金したりリースしたりする方法を選べば、負担を抑える余地も生まれてくる。
一年前より約三割も高騰したガソリン価格に、特にクルマが足代わりとなっている地方都市の消費者は悲鳴を上げている。低燃費を売り物にしたコンパクトカーやハイブリッド車などの購入を考えようにも、月々の負担額の大きさが気になるところだろう。
オリエントコーポレーションの試算では、例えば二百万円の新車を買う際に頭金十万円を用意し、残りを三十六回払いにした場合の月々の支払いは約五万九千三百円になる。車検や維持費など、他の負担も軽くはない。
クルマを手に入れる時には、全額を支払って自分の所有にすると考えるのが一般的。最近ではそうした常識にとらわれず、出費を抑える方法に注目が集まっている。
その一つが「残価設定型ローン」。新車を三―五年後に中古車として売った場合にいくらで売れるか(残価)を設け、利用者は新車価格と残価の差額分を借り、金利を含めて分割で支払う。
二百万円の新車を買う先ほどのケースで、例えば三年後の残価が八十万円とした場合、月々の支払いは約三万八千円で済む。手元の資金が少なくても車を手に入れることができる。
もちろん、全額を手当てする場合と違い、ローンを完済してもクルマは「自分のもの」にはならない。残価設定型でローン期間の三―五年が経過すると、三つの選択肢がある。一つ目が車の買い取り。車を気に入り、乗り続けたい場合、残価の部分を一括または分割で支払えば自分のものになる。二つ目が返却。クルマが不要になれば、ローンを組んだ会社に返せば、追加の出費は基本的に発生しない。
三つ目は買い替え。再び残価設定型ローンを組めば、月々の負担を抑えて、最新の車に乗り換えることもできる。残価設定型で三年ごとに新車に乗り換えた場合、車検の手間が一切かからないのもメリットだ。ローンの多くが三年か五年の設定になっているのは、車検の時期に合わせているからだ。
残価設定型ローンは「中古車取引が活発になって、市場の厚みが増したことで広がった」(オリエントコーポレーション)という。この車種のこの色なら三年後にいくらというのが予測しやすくなり、将来の残価を設定したローンを組みやすくなった。トヨタファイナンスによると、最近はトヨタ自動車の新車販売の約一割で残価設定型ローンが使われている。
残価設定型ローンにはいくつか注意点がある。まず、残価が当初の想定より下がっていると、購入者が追加の損失を負う場合があるということだ。保証付きのローンなら業者側が負担する。
使い勝手の面でも、まったく自由というわけではない。走行距離を制限する場合もある。たとえばオリコは契約時に購入者の車の利用頻度などを聞いて、制限距離を設定。ローン期間終了時点でそれを上回った場合は、利用者が追加の費用を負担することになる。
残価設定の場合は適用される車種を限定する場合があることにも注意。流通量の少ない外車や、トラックなど商用車は対象外になることが多い。ディーラー系のローン会社でも、各販売店によって対象車種が異なるので確認する必要がある。
また金利の支払い負担が高止まりしやすいことにも注意が必要だ。金利は残価を含めた自動車代金の全額にかかる。残価設定の場合は残価が据え置かれるため、自動車の代金全体がなかなか減らず、支払総額がふくらみやすい。
二百万円の車を三年の通常ローンで買う場合と、三年の残価設定ローンを組んでローン期間終了後に残価の八十万円を一括で支払う場合で試算すると、支払総額は残価設定ローンの方が七万円ほど割高になる。
当初の負担が安くなるとはいえ、長く乗り続けるのであれば通常のローンの方が得だ。「子供が幼稚園に通う間の送り迎えで車を使いたい」という一時的なニーズや、「常に最新機能の付いた車に乗っていたい」という好みがある人に向いたローンといえそうだ。
(山崎純)
次回は「金融商品 比べて選ぶ」を掲載します。
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