20080817 日本経済新聞 朝刊

 住宅の新築・購入、改修の際、知っているのといないので負担額に大きな差が出るのが税制。景気対策などで様々な優遇措置が講じられる一方、内容が頻繁に改正されるため、利用者は注意が必要だ。二〇〇八年末から〇九年末にかけて期限切れを迎える住宅・不動産関連の税制を点検した。
 「十一月に入居できることになり、ホッとしている」。新築マンションの購入を検討していた長崎市在住のAさん(36)は、現行の住宅ローン控除制度(住宅ローン減税)が〇八年十二月末に期限切れとなる前にお目当てのマンションに入居できる見通しとなり、胸をなで下ろした。
認知度低い制度も
 Aさんは約二千五百万円の住宅ローンを借りるに当たって、住宅ローン減税を十五年利用することを前提にしていた。ところが、マンションの入居時期が当初の予定よりもずれ込んでしまい、仮に年をまたげば減税を受けられなくなる恐れがあったのだ。
 住宅ローン減税は住宅ローンの残高に応じて所得税額の一定割合を控除する制度。一九九九年に景気対策の一環として大幅に拡充され、当初は十五年間で最大五百八十七万五千円が所得税額から控除された。その後、段階的に縮小され、〇八年入居の場合、最大控除額は百六十万円だ。
 住宅ローン減税はこれまでもたびたび延長されてきた。今回も景気の後退を受けて政府・与党が近くまとめる経済対策の中に「延長・拡充」が盛り込まれる可能性があるほか、国土交通省は〇九年度の税制改正で二世代住宅や「二百年住宅」などを対象とした新たな税優遇措置の創設を財務省に要望する方針だ。
 〇八年末から〇九年末にかけて期限を迎える住宅・不動産関連税制のうち、個人が住宅を売買したり、増改築したりする場合に関係する主な税制をまとめたのが表。
 この中で住宅ローン減税(表の(1))と同様、〇八年十二月末に期限切れを迎えるのが省エネ改修促進減税とバリアフリー改修促進減税(表の(2))。省エネとバリアフリーの改修工事に充てるために借りたローン残高のうち一千万円以下について、住宅ローン減税と同じく、年末のローン残高に一定の控除率を掛けた額を所得税額から控除する。
 対象となる改修工事は、省エネ減税が居室のすべての窓の改修、床や天井、壁の断熱工事など、バリアフリー減税が廊下の拡幅、手すりの設置、段差の解消などだ。
 住宅ローン減税は新築だけでなく、既存住宅の耐震改修やリフォームなどの増改築も控除の対象となっている。そうした控除対象の中で環境問題や高齢化に対応した家づくりという特定の政策目的に沿った改修工事を促進するため、返済期間や控除率を住宅ローン減税よりも利用者に有利に設定したのが省エネ減税とバリアフリー減税だ。
 住宅ローン減税を利用するには返済期間が十年以上でなければならないが、省エネ減税とバリアフリー減税は返済期間が五年以上であれば利用できる。控除対象額一千万円のうち、基準を満たせば改修工事費用二百万円までのローン残高について、二%の控除率が適用される(二百万円超は一%)。住宅ローン減税は〇八年入居で控除期間十年の場合でも、控除率は最大一%だ。市町村に申告すれば、固定資産税も翌年度に限って三分の二に減額される。
 バリアフリー減税が始まったのは〇七年四月、省エネ減税は〇八年四月。まだ日が浅いこともあって、存在自体ほとんど知られていないのが実情だ。ただ、情報サイト「オールアバウト」で税金のガイドを務める税理士の田中卓也さんは「使い勝手が比較的良い制度で、利用しない手はない」と話す。
焦って利用は禁物
 ただ、省エネ減税とバリアフリー減税を利用する際は、住宅ローン減税と併用できないことに注意する必要がある。借入額が一千万円を大きく上回ったり、返済期間が長かったりするなど場合は、省エネ減税やバリアフリー減税を使うよりも住宅ローン減税を利用する方が控除額が増え、有利になる場合がある。
 省エネ改修は家計にとって、減税以外にも利点がある。ファイナンシャルプランナー(FP)の平野雅章さんは「省エネ性能を上げることで光熱費を削減できる」と指摘する。国土交通省の試算によると、一九八〇年当時の省エネ基準の戸建て住宅の年間冷暖房費が約九万二千円なのに対し、省エネ性能を現行の九九年基準に上げれば約五万二千円に引き下げられる。住宅の断熱効果が高まるためだ。
 表の(4)から表の(9)は主に不動産の売買に関連する減税措置。〇九年三月末で期限が切れるが、これまでも延長されている。これらの減税は利用する際に申告の必要がないものが多いが、不動産取得税の軽減は都道府県税事務所への申告が必要だ。
 住宅・不動産に関する税制は家計に大きな影響を与えるだけに、税制改正などの動きはしっかりチェックする必要がある。ただ、FPの大石泉さんは「税制に関心を持つことは大事だが、期限を意識し過ぎるあまり、焦るのは禁物」と指摘する。住宅のリフォーム工事などを手掛ける大金興業(千葉市)の社長で、住宅・不動産税制に詳しい大野光政さんも「住宅の取得やリフォームは中長期的な計画づくりや業者選びが肝心。そのうえで、優遇税制の利用を考えるべきだ」と助言する。
(手塚愛実)
【図・写真】省エネ改修工事をすると減税が受けられる








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