20080815 日本経済新聞 夕刊

 七月の米住宅着工件数が十九日に発表される。米国経済の最大のリスクとされ、世界的な金融不安の震源地でもある米住宅市場の先行きを占う意味で注目される。市場予想を大幅に下回れば、景気の不透明感は一段と強まり、「株売り・債券買い」につながる可能性がある。
 米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題が表面化した二〇〇七年夏以降、着工件数は減少基調が鮮明だ。今年に入って百万戸を下回る月も増え、五月は九十七万七千戸と約十七年ぶりの低水準となった。
 六月は百六万六千戸と増加に転じたが、七月にニューヨークの集合住宅の建築基準が変わる前の駆け込み需要が原因とみられる。全体の約六割を占める一戸建ては約五%減少した。
 七月については、再び百万戸を割り込むとの見方が多い。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは九十五万戸と予想。六月の特殊要因がなくなるうえ「中古住宅の在庫増加や住宅価格下落で新規着工の伸びは期待しづらい」と指摘する。
 九十万戸とみる日興シティグループ証券の村嶋帰一エコノミストは「住宅ローンの融資基準を厳格化する動きが信用力の高い層にも広がっている」と言う。ローンが組めなければ販売は滞り、業者の在庫は増加して新規着工も抑えられる流れになる。
 米住宅公社の経営不安が表面化したが、「七月の着工件数に直接は影響しない」(三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミスト)との見方が大勢。いったん建築許可が下りた物件の建設が中止されることは考えにくい。ただ両公社が住宅ローン市場拡大に果たしてきた役割は大きく、中期的には影響が避けられない。
 景況感悪化のもう一つの原因だった原油価格の高騰は一服しつつあり、予想の平均値である九十万戸半ばであれば、目立った影響はなさそう。予想を大幅に下回るようなら米景気後退が改めて意識され、安全資産である債券を買って、リスク資産である株を売る動きが加速しそうだ。
(証券部 荻野卓也)



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