20080815 日本経済新聞 朝刊
新郎新婦の出身地から取り寄せた食材を使った料理を振る舞い、お開きの際には映画のような「エンドロール」で招待客を紹介する――。もてなしの趣向を盛り込むのが最近の披露宴のはやりのようだ。
「ハデ婚」再び?
八月初旬、笹川美香さん(仮名)は婚約者とともに都内のホテルに出向いた。「メーンの肉料理は、国産牛のヒレ肉を使ったものにしよう」。試食会で決めた料理は招待者一人当たりの代金が二万円を超え、見積もりより三千円増えた。ANAインターコンチネンタルホテル東京の高原秀彦・婚礼販売支配人は「料理と音響映像の単価は年三%伸びている」と話す。
結婚情報誌ゼクシィの二〇〇七年調査では、婚約から新婚旅行までにかかった首都圏の結婚費用は一件当たり四百三十六万三千円。ジミ婚ブームで費用が最も少なかった〇二年から三割増だ。少子化で親から資金面で援助を得やすくなったり、晩婚化で新郎新婦の懐具合に余裕が出たりしている事情もあり、「ハレの日ぐらいは」というハデ婚志向に復活の兆しがある。
食料やガソリンなど身の回り品の値上げが相次ぎ、日常生活で消費者の財布のひもは固くなるばかり。電通の消費実感調査では、六月時点で「支出を引き締め気味」との回答が七五%を占め、一九九三年の調査開始後で最高になった。一方で「たまにはぜいたくも良い」との回答も四割と、この比率も四年前に比べ約二倍。支出にメリハリをつける意識がうかがえる。
東京・新宿のホテル、パークハイアット東京。四十一階、地上百六十メートルにあるレストランは週末の朝、宿泊客ではない家族連れやカップルでにぎわう。目当ての朝食の料金は一人三千円程度。朝食にしては高額なメニューを味わうぜいたくさと、三千円ほどで一泊五万円超の高級ホテルの雰囲気を体験するお値打ち感。その両方が「たまになら」という心理をくすぐる。
希少価値に注目
かつてロンドンの市街地を走っていた一九六五年製の二階建てバスが、渋谷やお台場など都内のスポットを二時間かけて周遊する。街ゆく人たちには携帯電話をかざして写真をとる姿も。「乾杯!」。バスのなかでは川崎富士見ライオンズクラブ(川崎市)の会員ら十七人が飲み物片手に納涼例会中だ。
「注目されるご一行様みたいで気持ちがいいね」と、例会を企画した村上光平さんは笑みをこぼす。バスの利用は一回約十万円で一日二組限定。一カ月前から予約できるが、珍しさにひかれるように、週末分ともなると受け付け開始から十分で埋まるという。
ここにきて急速に不振が目立ってきたマンション販売。そんななかで四百六十もの分譲予定戸数のうち、約六割の販売価格が一億円を超える物件が人気だ。三井不動産レジデンシャルが開発・販売する「パークコート赤坂 ザ タワー」。明治神宮外苑など都心の緑を見渡せる四十三階建ての超高層物件で、既に三百三十戸は契約済みだ。
マンションは生涯に何度も機会がない買い物。高額物件が契約者を引きつけるのは「駅至近の立地と希少価値」(みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリスト)だ。経済環境が厳しさを増すなかでも、自らの価値観や選別眼にかないさえすれば、お金の使い方には大胆さが健在だ。
【図・写真】ロンドンバスに乗って宴会を楽しむ
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