20080814 日本経済新聞 夕刊
資源価格の高騰が日本経済に痛みをもたらしている。消費者物価は二%上昇、賃金が上がらないので購買力が低下して消費不況に落ち込む可能性が出てきた。一方、価格支配力を持たない業界では価格転嫁もままならず、原料高で悲鳴が上がっている。
資源価格高騰は消費国から資源国への所得移転を意味する。いわば、資源国から消費国は税金を賦課されたようなもので、原理原則としてこの種の所得減少を国内の需要政策でカバーすることはできない。需要政策を採用しても債務増大とインフレの加速を招くだけである。
できれば国民の間で痛みを分かち合う、共同体意識の発揮が望ましいが、具体策を提示するのは容易でない。高収益の業界に税金のサーチャージをかけて、苦しい業界に補てんする所得再分配の考え方もあろうが、生産性の低い業界を温存することにもつながりかねない。結局、痛みに耐えるしかすべはなさそうだ。
日本は過去二度にわたる石油ショックを経験したが、省エネなどの技術革新により付加価値の高い製品を生み出し、競争力を高めて危機を乗り越えた。今回もこれを踏襲するしかないだろう。
資源小国のわが国は省エネ・省資源、環境分野で高い技術力を有している。資源価格高騰や地球温暖化という時代的要請から、一大国家プロジェクトと銘打って、この分野に人と予算を大規模に投入し、海外の追随を許さないレベルまで技術力を高めることが必要だ。
同時に、制度疲労を起こしている非効率な分野の改革を断行しなければならない。歳出の無駄ゼロ実現など政府機能の見直しを推進し、民間部門では中小企業・サービス産業など生産性の低い分野の効率化を加速させるべきだ。
このように技術革新と制度改革の実行により経済体質を強化していけば、資源価格高騰時代を乗り切っていくことは可能であると思われる。
(伊藤忠商事チーフエコノミスト中島 精也)
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