20080814 日本経済新聞 朝刊
厚生労働省は二〇〇九年度の税制改正で、確定拠出年金(日本版401k)の掛け金の非課税限度額の引き上げを要望する。企業が拠出する掛け金に従業員が上乗せして資金を出す「マッチング拠出」の解禁も求める。政府が六月にまとめた「骨太の方針二〇〇八」が、制度改正の結論を年内に出すと明記したのを受け、実現の可能性は高まっているとみている。ただ税収減を懸念する財務省は依然として慎重で、税制改正の焦点の一つになりそうだ。
確定拠出年金は掛け金を加入者の投資判断に基づいて債券や株式などで運用し、運用実績に応じて老後の受取額が変わる年金。自営業者らが加入する「個人型」と、企業が社員のために提供する「企業型」がある。三月末で約二百八十万人が利用している。
厚労省が最優先で要望するのが、企業が損金算入でき、法人税などの課税対象にならない限度額の引き上げだ。現行の限度額は企業年金を持たない企業では一人当たり月額四万六千円、他の企業年金と併用している企業なら二万三千円。引き上げ幅は今後詰めるが、五千―一万円程度になる見通しだ。
厚労省によると、米国の非課税限度額は最大で年間一万五千五百ドルで、日本の水準は大幅に低いとみている。401kを導入した日本企業の間でも使い勝手が悪いとの批判が出ていた。
労使双方が掛け金を負担するマッチング拠出の導入も目指す。現在は掛け金を企業が拠出する場合、従業員が個人的に掛け金を上乗せすることはできない。この制度を設けて非課税の対象にすれば、老後の生活安定に向けた個人の自助努力を後押しできるとみている。
要望の背景には、現役世代の平均所得に対する年金額を表す所得代替率が低下していることがある。現在の制度設計では給付水準の下限は五〇%程度。だが想定以上に少子化が進んだり経済情勢が悪くなったりすれば、給付水準が下がる恐れがある。
今回の要望は自民党の税制調査会などで議論される見通し。仮に非課税限度額の引き上げ幅を五千円とした場合、減収見込み額は十億―五十億円になるため、財務省の抵抗も予想される。
厚労省は昨年も同様の要望を出したが、実現しなかった。ただ今年は骨太の方針で取り上げられたほか、自民党の国家戦略本部も確定拠出年金に関する特別委員会を立ち上げ、八月にも具体的な提言を公表する予定になっている。
在日米国商工会議所(ACCJ)は七月十八日、確定拠出年金の非課税限度額を引き上げるなど四項目を日本政府に対して要望すると発表した。要望は〇五、〇六年に続き三回目。記者会見したACCJ投資運用委員会の岡崎剛司委員は、「今年は骨太の方針にも取り上げられており、実現性は高い」と期待感を表明した。
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