20080808 日本経済新聞 夕刊

 インフレに強い資産として忘れてはならないのが不動産です。安定した家賃収入を期待して、根強い人気がある不動産投資ですが、ワンルームマンションを購入するだけでも、何百万、何千万円というまとまったお金が必要になります。銀行融資を活用する手もありますが、空室リスクを考えると二の足を踏んでしまいます。
 不動産投資では、安定した収益の確保、いわゆるキャッシュフローを重視した運用になります。
 現役世代よりもリタイア世代に注目される投資先と思われますが、忘れてはならないのが課税関係です。賃料収入などは不動産所得になり、ほかの所得と合算して総合課税扱いになります。所得税は累進税制なので課税所得が増えるほど、納める税金は多くなるのです。また世帯の課税所得が増えると、国民健康保険や介護保険料も増えることがあるのです。安定した収益を得るはずが、所得税以外にも負担が増えるという、悪循環になるかもしれないのです。
 同じ不動産投資でも、上場不動産投資信託(J―REIT)を対象と考えてはいかがでしょう。投資家から集められた資金と借入金などで、オフィスビルや商業施設などへ投資して、その賃料収入や物件の売却益などを投資家へ配当金という形で還元する商品です。
 証券取引所に上場されているため、市場が開いていればいつでも売買ができます。二〇〇八年八月一日現在、四十二本の上場不動産投資信託が取引されています。今期の予想配当金を二倍した金額で配当利回りを計算すると六%前後。為替リスクなしで十年物米国国債を上回る配当収入を得られるのです。
 投資資金は十万円程度から最高でも百三十万円前後なので小口資金で投資することができます。不動産は公設の取引所がなく流動性が非常に劣る投資商品ですが、上場不動産投資信託は市場が開いていれば、いつでも売買することができ、売買が成立すれば四営業日目に受け渡しが完了するという流動性も高い商品なのです。
 気になる課税関係も株式と同じ。配当金に関しては、〇八年内であれば、一〇%の源泉徴収で済ませることができます。売却益(譲渡所得)も、今年であれば、一〇%の申告分離課税で済ませることができます。特定口座の源泉徴収選択口座(いわゆる源泉徴収あり)で売買をすれば、証券会社が税金の計算をしてくれ、納める税金があれば徴収までしてくれます。
 源泉徴収選択口座だけで売買をしており、かつ確定申告をしなければ、世帯所得が増えることはない、つまり、国民健康保険や介護保険料の負担が増えることもないのです。ただし、〇八年度の税制改正により、〇九・一〇年における軽減税率一〇%の取り扱いが一定額までとなっている点は確認を怠らないようにしましょう。(この項おわり)







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