20080808 日本経済新聞 朝刊

 住宅ローンやクレジットカードなど、民営化後に日本郵政グループが始めた新規事業の出足が低調だ。住宅ローンの六月末までの融資残高は、初年度目標二千百億円の一・五%にすぎない三十二億円にとどまる。カードの発行枚数は初年度目標の百万枚に対して三万枚と低迷している。郵便などの既存事業が先細りになるなか、新規事業の拡大は成長に不可欠。二〇一〇年度を目指す株式上場を前に、日本郵政は危機感を強めている。
 〇七年十月の郵政民営化から十カ月が過ぎ、提携などによる新規事業への進出が一巡。いち早く進出を果たした事業の実績が見えてきた。
 将来の収益の柱として特に期待が大きいのが、ゆうちょ銀行が五月に始めた住宅ローン、クレジットカード、変額年金保険の三事業。住宅ローンはスルガ銀行と組み、同行のローン商品を窓口で扱う事業を始めたが、融資残高は目標を大きく下回る。カード事業も低迷し、計画達成に黄信号がともり始めた。変額年金保険の収益への貢献はこれからだ。
 ライバルの銀行は新規事業の低迷を冷ややかに見つめている。あるメガバンク幹部は「後発組なのに明確な販売戦略が見えない。うまくいかないのは予想通りだ」と指摘。「住宅ローンやクレジットカードなどは市場がほぼ飽和状態。独自の強みを大々的に訴えなければ、今後も厳しいだろう」と予想する。
 低調なのは金融分野だけではない。郵便局会社が八月から始めた小型コンビニエンスストア「JPローソン」の展開や、引っ越しなどの生活サービスの取次業務も「今年度は試行の段階で収益性は不透明」(担当者)。郵便事業会社と電通グループの共同出資会社が始めるダイレクトメールサービスは、初年度の売上高が約五億円にとどまる見込みだ。
 新規事業はすぐに利益を生むものではないが、日本郵政グループの幹部は現状に危機感を抱く。成長シナリオを描けなければ、上場が難しくなるからだ。
 日本郵政は現在、民営化後に混乱した郵便局の運用改善など既存事業の効率化に懸命。新規事業の販売促進などは後回しになりがちだ。今後は住宅ローンの紹介を工務店に依頼するなど、徐々に新規事業に力を入れる考えだ。
【図・写真】ゆうちょ銀行は住宅ローンの販売に乗り出した(東京都立川市)




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