20080802 日経プラスワン

 資産になる持ち家か、賃貸暮らしか。生活スタイルに合う理想の住まい方を尋ねたところ、現在持ち家に住んでいるにもかかわらず「賃貸暮らしの方がいい」と答えた人が八%もいた。賃貸から持ち家へ、という「夢のマイホーム」像に何が起こったのか。
 調査はインターネット調査会社のマクロミルを通じて七月中旬に実施。対象は持ち家、賃貸に住む人三百九十人ずつ。居住歴を十年未満、十年以上二十年未満、二十年以上で尋ね、同数の回答を得た。
 「こんなはずでは……」。家を買ったものの、今では賃貸のほうがいいと思っている人たちの事情は様々だ。
 「静かな環境で、日ごろの買い物も便利なところだったのに」。戸建ての持ち家に十年以上住む五十代男性が悔しがるのは、となりに深夜営業の飲食店ができたこと。「午前二時になっても店の外で大声を出す人がいる。何度注意してもだめ」
 住んでから分かる“リスク”もある。「一カ月もたたないうちに手抜き工事が発覚」(四十代男性)、「建てた場所の風あたりが強くて外壁がすぐ傷んだ」(五十代女性)といったケースだ。「予想外に虫が飛んでくる」(四十代男性)というのも、日々のイライラ感を募らせる。
 「今の家に住んでから生活費を切り詰めたか」を聞くと、切り詰めた人の割合は持ち家派が四五%。賃貸派(三七%)を上回り、頭金の用意やローン返済が家計に響きやすい実態も浮かんだ。
 一方、住み替えが容易な賃貸暮らしの四五%が「退職後も家賃の負担が続くことが不安」と回答。「年金生活になったら現在の家賃は払えない」(四十代男性)という心配も目立った。住まい選びは人生設計の中でも大きな選択。メリットとデメリットの双方にきちんと目を向けたい。
 持ち家と賃貸では、生涯で払う住居費はどちらが得か? ファイナンシャルプランナーの平野泰嗣さんに、試算してもらった。
 四十歳で四千万円の分譲マンションを購入した場合と、四十歳で家賃十五万円のマンションを借り、子どもが独立して六十五歳から家賃約十一万円の家に移り住んだ場合を比較。期間は四十年とした。
 結果は表の通り。賃貸の住居費約七千二百万円に対し、持ち家は頭金と返済期間や金利の設定次第で大きく異なる。
 「頭金一千万円」で持ち家と賃貸はトントンだが、持ち家を売却できればその分、得ともいえる。ただ「賃貸なら頭金など初期費用がかからない分を運用に回せる。仮に五百万円を年二%で複利運用すれば四十年間で約千百万円(課税前)に。この運用益も含めると損得勘定が変わる」という。
 持ち家は「変動要因」が多い。ローンを繰り上げ返済すれば負担が減り、大掛かりなリフォームをすれば負担が増す。平野さんは「働き方や子どもの教育費などによっても住まいに費やせる金額は変わる」と話す。
 「賃貸物件は分譲に比べ設備のグレードが劣る」。賃貸住まいの二割がそんな「不満」を抱いていたが、実際はどうか。
 不動産情報サービスのアットホーム(東京都大田区)が首都圏の二〇〇七年度の賃貸成約物件を調べた結果、中古マンションのオートロック設置率は三八%。これが新築だと八四%に高まる。
 契約時の費用も軽くなっている。新築のうち礼金が「ゼロ」が〇七年度で一二%と前年度に比べ二ポイント上昇。相場の「二カ月」の物件は六二%と依然として多いが、前年度と比べて七ポイント低下した。
 アットホームの岩田紀子さんは「インターネットで多くの物件の比較が可能になり、供給側が防犯対策の改善や初期費用の軽減に動くようになった」とみている。







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