20080802 日経プラスワン
日本でペットとして飼われる犬や猫などは約二千五百万匹に達するという。「もはや家族の一員」ともいえる存在だけに、万一の時の備えはしっかりしておきたいところ。ペットが病気やケガをした際の医療費を補償する「ペット保険」の実力を探った。
「初めて飼うので、健康管理が一番心配」。東京都内に住む会社員のAさん(40)は八月から猫を飼い始める予定。飼育本を読んだり、猫を飼う人のブログの経験談を参考にしたりしつつも、不安は募る。「少しでも体調が悪そうだったら、すぐに動物病院に駆け込むと思う」というAさんは、ペット保険への加入を検討している。
表Aは主なペット保険の概要。もともと、ペット保険を扱っていたのはほとんどが無認可共済だったが、保険業法の改正を受け、二〇〇八年四月以降は保険会社二社、少額短期保険(ミニ保険)会社五社が販売している。
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「ペット保険のことを死亡保障の保険と誤解している人が多い」。ミニ保険会社アイペットの町田基樹さんがこう指摘するように、ペット保険は実際は一年満期の傷害保険に近い商品で、ペットが病気やケガをした場合の医療費を補償する。例えば、一歳のチワワの飼い主がアイペットの「五〇%プラン」に加入した場合、保険料は月額二千三百円で、動物病院でかかった治療費の半額が補償される。残りの半額は自己負担になる。
いったん動物病院でかかった費用を自分で全額支払い、所定の書類や領収書などを添えて郵送で保険金を請求すると、約十日から二週間で保険金が振り込まれるのが一般的。アイペットとアニコム損害保険は独自の健康保険証を発行しており、対応する病院の窓口で見せれば、その場で自己負担分だけを支払えばいい仕組みになっている。
商品によって保険金の支払限度額などが異なるので、加入を検討する際にはしっかり確認しよう。アニコム損保の場合、入院や通院は日額一万円で、それぞれ年間二十回が上限になっている。一方、アリアンツ火災海上保険は受診や手術の回数制限や一回当たりの支払限度額はなく、例えば「プラン50」なら、年間五十万円の範囲内で何度でも保険金が支払われる。
各社の保険とも、ペットが若いうちは告知のみで加入できるが、高齢になると健康診断が必要になる。表Bに保険金の支払い対象とならない主なケースを挙げた。犬や猫の場合、定期的に予防接種をする必要があるが、それらの費用は支払い対象とならないことに注意しよう。
犬や猫を飼う人のうちペット保険に加入する人の割合は現在、一%台といわれる。共済だった時代に不特定多数に向けた広告宣伝ができなかったことが、知名度の低さにつながっている面がある。情報サイト「オールアバウト」で損害保険のガイドをするファイナンシャルプランナー(FP)の平野敦之さんは「動物の病気やケガの治療にいくらかかるのか、明確な基準がないことも普及しない原因の一つではないか」と指摘する。
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では、実際にペットの治療にはいくらぐらいの費用がかかるのか。まず認識しておかなければならないのは、動物病院での診療はすべて「自由診療」という点。同じ予防接種でも、料金は動物病院によって四―五倍の開きがあるといわれ、手術や入院となれば予想を上回る大きな費用が生じる可能性がある。公的医療保険制度のもとで窓口負担や月額医療費の上限がある人間の場合とは全く異なる。
例えば、犬や猫が患いがちな症状の一つである、異物を飲み込んでしまう誤飲。あくまで標準的な金額だが、開腹手術が必要なら、手術費用、入院費用などすべての治療費を合わせて約十万円はかかるとされる。骨折は約六日間の入院に加え、検査・手術、通院などで約八万―二十万円。下痢をして一日入院し、二日間通院すると、二万―三万円かかるようだ。
アニコム損保の永井真樹子さんはペット保険加入の利点について「ペットの具合が悪そうな時に、保険に加入していれば、治療費を気にせずに動物病院に連れて行ける」と指摘する。平野さんは「加入する際には、商品をじっくり比較検討するだけでなく、重要事項説明書などもしっかり理解したほうがいい」と助言している。(手塚愛実)
【図・写真】ペットに独自の健康保険証を発行する保険会社もある
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