20080730 日本経済新聞 夕刊

 インフレを乗り切るのは、何も節約だけに限りません。手持ちのお金に働いてもらう「資金運用」で乗り切ることも考えられるからです。資金運用といえば、日本人は真っ先に定期預金の利用をあげることでしょう。金融広報中央委員会が毎年発表している「家計の金融行動に関する世論調査」によると、どの世代でも金融資産全体に占める預貯金の割合が、五〇%を超えているからです。
 ただし、定期預金などの預貯金の利息収入だけで、物価の上昇率を上回る収益を確保することはできません。二〇〇八年六月の全国消費者物価指数の上昇率は、前年同月比一・九%。上半期(一―六月)の平均でも一・二二%です。
 一方、七月二十五日現在、メガバンクの一年物定期預金の金利は〇・三五%、三年物でも〇・五%程度です。一年物や三年物の利息収入では、到底、消費者物価指数を上回ることはできない、つまり、実質、貨幣価値は目減りしていることになるのです。
 定期預金の預入期間を五年、十年と長くしてみても、同日時点の適用利率は一・〇%を大幅に下回っており結果は同じです。金利が高いインターネット銀行と比較しても、同日の一年物で一番高い金利を提示している銀行で一・〇%程度。やはり、消費者物価指数の上昇率を上回ることはできません。
 七月に個人向け国債が発行され、一年ぶりに適用利率は五年物、十年物ともに一・〇%台となりました。五年物は一・二二%、十年物一・〇%と、十年物では消費者物価指数を上回れないものの、五年物ではほぼ同じ水準です。
 しかし、預貯金や国債などの債券の利息には、所得税と住民税を合わせて二〇%の税金がかかります。五年物の利率が一・二二%であったとしても、手取り利息はその八割ですから〇・九七六%。やはり、消費者物価指数を下回ってしまうのです。
 しかも、個人向け国債の十年物を除くと、先に挙げた金融商品はすべて固定金利商品。たとえ税引後の利息収入が、今年上半期の消費者物価指数の平均上昇率を上回っていたとしても、企業が原材料費の価格上昇を転嫁してくれば、今年下半期以降の消費者物価指数はさらに上昇することになるのです。
 中・長期にわたって、消費者物価指数を上回る収益を資金運用で得るのであれば、少なくとも同指数プラス一・〇%以上の収益のゲタを履いておく必要があると考えられるのです。もはや、預貯金や個人向け国債などの確定利付き商品だけの資金運用では、運用期間の長短にかかわらず、消費者物価指数を上回ることは難しいといわざるを得ないのです。






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