20080729 日本経済新聞 夕刊
政府は二十九日、社会保障分野で緊急に取り組む「五つの安心プラン」をまとめた。医師不足対策として主に産科、救急、へき地医療に携わる医師を集中的に財政支援する方針を打ち出したほか、高齢者雇用や保育サービスの拡充なども盛り込み、今後一―二年で実行を目指す。信頼回復に向けて厚生労働省の組織や業務も見直す。ただ必要な財源規模は不明確で、実現に向けては課題が多く残る。(解説2面に)
プランは福田康夫首相の指示で舛添要一厚労相ら関係閣僚がまとめ、同日午前の閣僚懇談会で報告した。(1)高齢者への対応(2)医療体制の強化(3)子育ての支援(4)雇用対策(5)厚労行政の信頼回復――の五分野で、計百五十以上の項目を列挙。実行に向けた工程表もまとめ、大半は来年度予算の概算要求に盛る。法整備が必要な施策は秋の臨時国会や来年の通常国会への関連法案の提出を目指す。
高齢化社会への対応としては、「六十五歳以上」の雇用継続の推進を打ち出した。雇用保険などを財源に、継続雇用に取り組む企業を支援する。これまで「六十五歳まで」の雇用を重視してきたが、政策の範囲を一段と広げる。
中期的な課題として、高齢単身女性ら公的年金額が低い人に対し、現行の社会保険方式のもとで税財源で基礎年金を加算する「最低保障年金」の創設を検討する。会社で働く高齢者が老齢厚生年金を受け取る際、賃金に応じて年金額が減る在職老齢年金制度の見直しも検討し、高齢者の働く意欲を高めたい考えだ。
医療体制の強化も目指す。全体の医師養成数の増加に加え、短期的には産科や救急、へき地などで働く医師を手当などの形で財政支援する。その上で二〇一〇年度の次期診療報酬改定で地域医療の拡充を検討する。
子育て支援では、保育園と幼稚園の機能を合わせた「認定こども園」の整備を促進する「こども交付金」を創設。マンガ喫茶などで寝泊まりする「ネットカフェ難民」の就労なども支援する。
相次ぐ不祥事や縦割り組織への批判が多い厚労行政の改革も掲げた。厚労省内に新設する奥田碩トヨタ自動車取締役相談役を座長とする有識者懇談会が組織や業務の見直しを議論する。
社会保障費を巡っては、政府は来年度予算でも自然増を二千二百億円抑制する方針。医師不足対策などは抑制対象から外し、重要課題推進枠で対応するが、どれだけ財源を手当てできるかは不透明だ。
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