20080729 日本経済新聞 夕刊
福田康夫首相が策定を指示し、政府が二十九日発表した社会保障分野の緊急対策「五つの安心プラン」は、産科医などへの財政支援や厚生労働省の組織の見直しを盛り込み、ほころびの目立つ社会保障の再構築が政権の命運を握るとの危機感がにじむ。だが中身をみると、八月末にまとめる二〇〇九年度予算の概算要求の項目を前倒しして寄せ集めた印象が色濃い。(1面参照)
プランでは産科、救急などを担う医師の手当への財政支援や、「認定こども園」の整備に向けた交付金の創設などを目玉に据えた。年金記録問題や後期高齢者医療制度の不手際で国民の不満は高まっており、不安解消への取り組みが急務であることは間違いない。
とはいえ、プランは迫力を欠く。その大きな原因は財源規模を明示していないことだ。政府は社会保障国民会議で秋までに社会保障の大きな将来像を描き、緊急に取り組むべき対策は今回のプランで示すという整理をした。だが多くの施策は例年の概算要求項目と同様に、予算編成が終わるまで、どの程度の実効性を持つ仕組みや規模に仕上がるか分からない。
国民会議が六月の中間報告で指摘した基礎年金への「最低保障年金」導入も、今回「検討する」としたが、具体論はこれから。大きな柱に掲げた「厚労行政の信頼回復」でも、厚労省の組織や業務を見直す方向性は明確とは言えない。
少子高齢化で社会保障への国民の期待は膨らみ、かかる費用も増大。財源論を避けたまま総花的にメニューだけを並べても、一つひとつの施策が力強さに欠けるという結果を招きかねない。国民の安心にすぐにつながるかどうかは不透明だ。
------------------------------------------------