20080728 日本経済新聞 朝刊

 生命保険会社が取り扱う個人年金保険に異変が起こっている。年金額が運用次第で変わる変額年金の人気が一服し、契約時に金額が決まる定額年金の販売が好調だ。昨夏以降の株価の低迷で、リスクの高い変額年金が敬遠されている。食品、ガソリンなどの値上げや景気の減速に伴う将来不安により、お金をより安全に運用する傾向が個人に出ていることを反映しているといえそうだ。
 生命保険協会によると、二〇〇七年度下期(〇七年十月―〇八年三月)の変額年金の販売額は約一兆五千三百億円で、同上期に比べて約二八%減った。一方、定額年金は二兆三千六百億円と同一二%の増加。この結果、個人年金に占める定額年金の割合は六一%と三年ぶりの高水準となった。定額年金は四―六月も好調だったという。
 ■長期金利の上昇影響 変額年金は〇〇年ころから出始めた商品で、〇二年十月に銀行でも販売されるようになった。日銀による超低金利政策で定額年金の魅力が薄れたこともあり、〇三年度に三〇%未満だった変額年金のシェアはじわじわと拡大。特に株価が上昇した〇五年度下期と〇七年度上期には五〇%を超えたほどだ。
 昨夏に米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題が深刻になって日経平均株価は急落、いまも回復していない。変額年金は株価上昇による年金額の上積みをねらって購入する人も多く、株価低迷で魅力が薄れた。一方、定額年金は五―六月の長期金利が上昇したことで人気が高まった。
 定額年金のうち日本生命保険の主力商品「マイドリームプラス」は四―六月、前年同期の二・二倍となる五千六百件を銀行などで販売。特に六月は前年同月比で四倍も売れた。明治安田生命保険も四―六月の販売件数は前年同期の五・五倍に膨らんだ。
 昨年九月に完全施行した金融商品取引法で、元本割れのリスクがある変額年金はより丁寧な説明が求められるようになったことも影響した。「地銀などでは説明しやすい定額年金を勧める傾向が強まった」(大手生保首脳)という。
 ■定期預金も増加傾向 ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんは「定額年金のほうが商品性がわかりやすく、顧客が負担する手数料も安い。変額年金と違い、年金保険料控除の対象になるなど税制面でも有利」と指摘している。
 年金以外でも家計の安全志向は強まっている。日銀の統計によると、五月の定期預金残高は前年同月比で五・四%の増加。財務省が十五日に発行した個人向け国債の販売額は、利率が上昇したこともあって前回(四月)の約三倍に増えた。






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