20080728 日本経済新聞 朝刊
公立病院を経営する地方自治体(一部事務組合を含む)の二〇〇六年度の病院会計を分析したところ、全体の七割強、四百七十七団体で累積損失が前年度より増加したことが分かった。地方財政健全化法の施行で自治体財政は連結ベースで評価され、経営難の病院の放置は難しくなる。自力で経営改善できない病院に対し、自治体は税金投入を増やすか医療サービスの水準を下げるかの決断を迫られそうだ。
〇六年度に公立病院を経営していた六百六十九団体うち、赤字が積み上がって累積損失を抱え込んでしまっているのは五百五十三団体ある。
公立病院は民間病院と比べ職員や看護師の人件費が高い、建物や設備にカネをかけているため減価償却負担が重い、などといった問題がある。医師不足も重なって一病床あたりの収入は低く、赤字体質が染みついてしまった。
「高度医療や救急は赤字でもやめられない。国や自治体は、まじめに取り組んでいる病院にカネをきちんと入れるべきだ」。全国自治体病院協議会の辺見公雄会長は話す。
少なからぬ自治体が十分に財政支援をしていないため、公立病院の経営状態は深刻だ。財政支援が不足
累損が拡大した四百七十七団体を対象に、一般会計から病院会計への出資や貸し付けを使って、赤字を解消できるか計算してみた。
その結果、三百四十九団体が単年度の赤字を穴埋めできないことが判明した。一般会計からの繰り入れ不足額は神奈川県横須賀市と沖縄県、松江市で二十億円を超え、全体では一千億円にも達する。
横須賀市は〇六年度から将来の退職金支払いに備えた引当金の計上を開始。過去分の二十四億円を一括計上したため、最終赤字が二十九億円弱に膨らんだ。公立病院は民間企業同様に貸借対照表(バランスシート)を作成しながら、必ずしも退職金の引き当てをしていない。他の団体も同じ処理をすれば、赤字が拡大する公算が大きい。
沖縄県は一般会計が六十八億円強を投入してもなお二十二億円弱不足する。累損は五百十九億円弱だ。県病院事業局では「人件費が医業収益の七割を占めるなど高コスト体質が原因」と分析。材料費を削減するため、今年四月から納入業者との価格交渉を始めた。経営見直しも
自治体から最低限の財政支援すら受けられないため苦境に陥っている公立病院も多い。国は自治体に一定の支援を義務づけ、病院会計が返済する借金の三割を地方交付税で配るなどしている。だが、自治体によってはもらった交付税を一般会計で使ってしまい病院会計に回していない。
総務省の資料によると、大阪市で三十億円、名古屋市で二十億円それぞれ病院会計に対する繰り出しが国の基準より少なかった。全国では二百四十五団体で財政支援が不十分だった。
公立病院の問題は、病院長をはじめとする現場に権限が移譲されておらず、かといって首長が経営を掌握できているわけでもないところにある。一生懸命働いても待遇や評価が変わらなければ、医師はやる気を失う。
総務省の公立病院改革懇談会座長だった長隆公認会計士は「独立行政法人化するなどして医師に働くインセンティブを与えれば、病院の経営は改善する」と断言する。独法化は公務員の身分を失う職員などからの抵抗も強いが、検討する自治体は増えている。赤字体
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