20080727 日本経済新聞 朝刊

 ガソリンや食料品、光熱費など、日常生活に直結する値上げが相次ぎ、家計を圧迫している。夏のボーナスが六年ぶりに前年を下回るなど、収入増が望めない中で、家計費の節約は切実な課題。読者へのアンケート調査と専門家の意見をもとに、物価高に対抗する効果的な節約術を探った。
 和歌山県在住の松井里子さん(仮名、36)はガソリン代の値上がりに驚いた一人。ここ一年で支出は一割強も増えた。家計費全般を見直す中で、負担増を大きく補ったのはガソリン代の節約以上に、携帯電話料金の見直しだった。最適なプランを携帯電話会社に聞いて変更しただけで一カ月で四千円の節約。「こんなに簡単なら、もっと早く見直せばよかった」と話す。
 ここにきての物価の急速な値上がりを受けて二〇〇八年六月下旬、読者で構成する日経生活モニターを対象に「各家庭での値上げへの対抗策」について緊急アンケートを実施したところ(回答者約二千八百人)、節約に努めている品目で多かったのは、値上がりの顕著なガソリンと食料品。一方で「節約効果の高い方法」を尋ねると、携帯電話料金や保険料の見直しなど、一連の値上がり品目とは直接関係がない回答が目立った。
固定費は落とし穴
 ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは「節約を考える場合、最初に見直すべきは、毎月、銀行口座から自動的に引き落とされる費用や手数料などの負担」と強調する。こうした固定的な費用は額が大きい半面、支払っている感覚が薄く、ともすれば気付かずに見過ごしがちな経費。ただ、いったん見直すと、以後は継続的に支出が減るので、生活や消費のスタイルを大きく変えなくとも、大きな節約効果を得られるという。
 特に「通信費」「保険料」など、支出額の大きいものから見直すと効果的。保険の見直しの相談を受ける藤川さんは「生命保険を見直した結果、生涯の支払保険料が数百万円ほど少なくなるケースも多い」と指摘する。家計費の節約でまず最初に取り組むべき項目を表Aにまとめた。
 以上の項目を見直したうえで、次に着手するのが日々のやりくりの中での節約。モニター調査では、値上がりの激しいガソリン代と食費は従来の生活スタイルを変えて節約に励む人が多かった。
 ガソリン代の節約法で目立ったのは、車の使用頻度の削減。奈良県在住の中山友広さん(仮名、57)は自動車通勤から自転車通勤に切り替え、月々二万円を節約する。「体重も減り、環境にも貢献できる」という一石三鳥の方法だ。車で買い物に行く回数を減らす人も多かった。
 車を所有せずに、リースやレンタル、カーシェアリングなどを利用する選択肢もある。オリックス自動車によると「車を手放してカーシェアリングに切り替えたところ、ガソリン代や駐車料金なども含めて半年間で三十万円節約した人もいる」という。
 アイドリングストップやゆっくりとした加速など「エコドライブ」も節約術の一つ。日本自動車連盟は「〇七年度の講習会参加者は平均でガソリン消費量を約三割減らせた」と説明する。ガソリン代が安くなる石油各社のクレジットカードの利用も一案だ。
 インターネットのガソリン価格比較サイト「gogo.gs」は、利用者が安いガソリンスタンドを見つけたらその情報を投稿するサイト。運営会社のゴーゴーラボは「大きな街道沿いにある店舗や最近セルフ化した店舗が安い傾向にある」と指摘する。
生鮮食品を活用
 食費の節約で目立ったのは「食べる量や回数を減らしてメタボ対策と両立」(三重県の五十代の男性)、「外食を減らす」(愛知県の五十代の男性)といった量や質を見直す作戦。ただ「病気になって医療費がかさんだ」(神奈川県の五十代の女性)という人もおり、やり過ぎは禁物だ。
 パン食から米食に替えるなど値上がりした食品を避けての献立づくりや、価格変動に関係なく収穫できる家庭菜園の活用も有効な節約術だ。
 「狙い目は生鮮食品の利用」との声もある。総務省などの調査によると、生鮮食品は加工食品ほど値上がりしていないためで、節約アドバイザーの和田由貴さんは「加工食品を避け、主に生鮮食品で料理しているが、食費はあまり増えていない。これを機に献立を上手に立てる力を磨くべきだ」と助言する。
 節約術には多くの人が実践する「定番物」があるが、本当に効果があるのか、今回のモニター調査では賛否が分かれた(表B)。特に目立ったのが水道代と電気代の節約。
 和田さんは水道代について「日々の節水では劇的な節約効果は得にくい」と指摘する。例えば、風呂の残り湯九十リットルを使って洗濯すると一回当たり約二十二・五円の節約になる(東京ガス調べ)が、こうした積み重ねを多いと見るか少ないと見るかで賛否は分かれるようだ。
 電気代では「コンセントをこまめに抜いているが、効果が分かりにくい」との声が目立った。家電製品はここ数年待機電力が抑えられている。製造年の古い製品や待機電力の多い製品のコンセントを重点的に抜けば、負担感に見合う効果を実感しやすいだろう。(小林由佳)




------------------------------------------------