20080724 日本経済新聞 朝刊
信頼回復 不安残す
二〇一〇年に発足する社会保険庁の後継組織「日本年金機構」が、懲戒処分を受けた社保庁職員を一切採用しないことになった。政府は自民党案を受け入れ、二十九日にも基本計画を閣議決定する。社保庁は不採用者の範囲を限定しようとしたが、総選挙を意識した自民党に修正を迫られ、三度目で決着した。ただ採用に関心が集中し、適切な業務運営ができるかという視点は素通りした。
「年金機構は懲戒処分を受けた職員は正規、非正規を問わず採用しないことにする」。自民党が二十三日開いた厚生労働部会など合同会議の冒頭、「社会保険庁等改革ワーキンググループ」の尾辻秀久主査(元厚生労働相)がこう述べると十数分後には了承された。
最初に社保庁が自民党に提示したのは、休職の許可を得ないまま組合活動をしていた「ヤミ専従職員」に限り、非正規雇用でも採用しないという案。これが拒否されると、個人情報ののぞき見などで懲戒処分を受けた八百六十七人のうち「停職」「減給」者も採用しないと追加した。
だが処分が最も軽い「戒告」者には期限一年の非正規雇用ながら採用の道を残したため、自民党は「採用基準が甘い」として独自案を作成。「戒告」者も一切採用しないことになった。
次はヤミ専従の実態解明に焦点が移る。社保庁は東京、大阪、京都の社保事務局で三十人のヤミ専従職員がいたとの調査結果を公表したが、調査自体が不十分との指摘が多い。厚生労働省は二十三日、「社会保険庁職員にかかわる服務違反調査委員会」(委員長・水嶋利夫新日本監査法人理事長)の初会合を開き、実態解明の作業に着手した。
ただヤミ専従の実態解明が進めば、懲戒処分歴のある職員はさらに増える。経験者が少なくなれば、年金機構の業務運営に支障が出る可能性もある。舛添要一厚労相は「(一千人を計画している)民間人採用をさらに増やして対応したい」と語った。
年金機構への移行にあたっては人員を二割削減することが決まっている。一方で、八億五千万件の紙台帳記録とコンピューター記録を照合する作業には数千人の非正規職員を投入する予定。二千億円の費用がかかる見込みだ。そもそも現場である社会保険事務所では業務に慣れない非正規職員が起こした記録ミスも多い。本当に必要な人数や民間委託の方法など業務運営の議論は進んでおらず、信頼回復には不安を残している。
------------------------------------------------