20080722 日本経済新聞 夕刊
日本経済は海外発のリスクに対して脆弱(ぜいじゃく)さを抱えている。
〈国際的に見た日本企業のリスクテイク〉 「企業や家計がリスクをとらないから日本経済の成長力が弱い」としばしばいわれる。実際に企業のリスクとリターンの関係をみると、リスクをとっている企業ほど総資産利益率(ROA)が高い。世界的にも企業がリスクをとっている国、起業が盛んな国ほど成長している。
特定分野への「選択と集中」はリスクテイクと解釈できる。事業の選択と集中を示す同業種間のM&A(合併・買収)は、日本は先進国の中で少ない。開業率も低い。「ベンチャーキャピタル投資」も主要先進国と比べ低水準にある。
〈日本企業のリスクヘッジ能力〉 加工型製造業では、日本は米国と比べて為替レート変動の影響を受けやすい企業が多い。
〈日本企業のリスクテイク能力〉 日本企業の連結財務諸表で事業部門などの区分(セグメント)をみると、コア事業の売り上げの集中度は変化していない。二期続けて営業赤字だった不振事業からの撤退も遅れており、「選択と集中」は進んでいない。
研究開発費は二〇〇一年度以降は着実に増え、基礎研究比率の高まりは長期的視野に立ったリスクテイクの積極化として評価できる。研究開発費は機関投資家の持ち株比率と正の、借入比率と負の相関を持つ。
M&Aに対する企業の意識をみると、たとえ「友好的M&A」であっても、相手が外資系の場合は四五%、国内企業でも三割の企業が「回避したい」と回答。株式持ち合い比率が高いほどM&Aに回避的な意識を持つ傾向にある。
〈日本型企業システムの変化とリスクテイク〉 ROAが変化する「ばらつき」をリスクテイクとすると、平均勤続年数が長くメーンバンクへの借り入れ依存度が高い「伝統的日本型」企業はリスクテイクの度合いが小さい。
〈リスクマネーの供給と家計・金融機関のリスク対応力〉 金融やインターネットの知識が多いほどリスク資産への投資割合が高い。住宅ローンを借りている世帯はリスク資産投資が少ない。家計資産に占める投資信託の割合は国際的には低い水準。公的年金は企業へのリスクマネー供給につながる株式・出資金の割合が高くない。
銀行は不良債権比率が下がり、自己資本比率は上昇傾向にある。リスクテイク能力は高まっている。
〈まとめ〉 日本企業が積極的にリスクをとって収益率を高めていくには、ガバナンスの改革が有効な場合が多い。家計が投資したリスクマネーが収益機会を的確にとらえ、収益を家計に還流する仕組みを構築するには、投資先を選別し、企業活動に適切な動機付けを与え、必要に応じてこれに介入する「ガバナンス」機能の確立が前提条件となる。
------------------------------------------------