20080719 日本経済新聞 朝刊

 運用実績によって受取額が変わる変額年金保険で、購入時に払う手数料が不要な商品が広がってきた。住友生命保険、東京海上日動フィナンシャル生命保険などが相次いで購入時手数料をなくした新商品を投入し、既存商品にも料率をゼロに見直す動きがある。運用が低迷するなか、契約者が手数料負担の重い商品を敬遠しているため。購入時以外の手数料を引き下げる動きも活発になりそうだ。
 変額年金保険は契約時にある程度まとまった額の保険料を一括で払い、十年間ほど運用してから年金を受け取る商品。二〇〇二年に銀行での販売が認められ、市場が急拡大した。年間の販売額は三兆―四兆円で、うち八割ほどが銀行経由とみられる。三月末の残高は十六兆円を超えた。
 変額年金保険は購入時に保険料の四―五%の手数料(契約時初期費用)を払うのが一般的だった。手数料は保険料から差し引かれ、残りが運用に回るので、その分運用効率が悪くなりがち。手数料五%なら一千万円の変額年金に加入しても、当初運用額は九百五十万円となる。
 住友生命が十四日に発売した新商品「たのしみ世代」は購入時の手数料がかからない。六月に発売した東京海上日動フィナンシャルやT&Dフィナンシャル生命保険の新商品も手数料ゼロだ。昨年十月に変額年金保険に参入した、第一フロンティア生命保険の商品もすべて初期手数料なしだ。
 またアイエヌジー生命保険は八月に主力の変額年金保険を改定し、これまで五%としていた初期手数料をゼロにする。
 変額年金保険は株式投信などで運用するため、最近は株式相場の低迷で運用成績が悪化しており、初期手数料を嫌う契約者が多いという。主要な販路である銀行では「行員が顧客に説明しやすい」(大手生保幹部)との見方があることも、初期手数料なしの商品が増える背景とみられる。
 個人顧客を対象にした競合商品である投資信託では既に購入時に手数料がかからない「ノーロード型」が急速に普及。運用期間中の手数料(信託報酬)が安い指数連動型投信の人気も高まっている。これに対し変額保険は初期手数料以外にも、運用期間中には保険関係費や資産運用関係費、年金受取時には年金管理費がかかる。解約時も手数料が必要で、投信に比べて総じて契約者が負担するコストが重い。
 こうした商品性を改善しようと手数料体系を幅広く見直す動きも出てきた。住友生命の新商品は二―三%が一般的な保険関係費を一%台半ばに抑えたほか、東京海上日動フィナンシャルの新商品は解約手数料がほとんどかからない。
 変額年金保険は二―三年前までは保険会社にとって収益を見込みやすい商品だったが、競争激化などを背景に収益性が低下。手数料を引き下げても販売規模の拡大で補う必要性が高まっている。一方、年金額の最低水準を保証している保険会社も多く、運用が悪化すれば穴埋めが求められる。各社のリスク管理の巧拙がさらに問われそうだ。