20080719 日本経済新聞 朝刊
来年度に基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げるために必要な二兆円余りの財源について、厚生労働省が今夏の来年度予算の概算要求に盛ることは難しい情勢となった。財務省が秋以降の政治決着に結論を持ち越す方針のためだ。ただ要求を見送れば、政府・与党が公約である二分の一への引き上げを断念する印象を与え、年金不安が一段と深まりかねないとの懸念が与党内でも出ている。
政府は各省庁の予算要求の上限を定める概算要求基準について二十九日の閣議了解をめざしている。基準に従って、各省庁は八月末までに概算要求する段取りだ。
要求基準を巡る水面下の調整で、厚労省は基礎年金の国庫負担の引き上げ財源について、概算要求段階で満額の計上を認めるよう財務省に求めている。
これに対し、財務省は概算要求の「枠外」とする方針。巨額の財源を確保するには消費税増税など税制の抜本改革が避けられないため、概算要求段階では計上を認めず、秋以降の予算編成過程で政治決着させる公算が大きくなった。この場合、概算要求では現行の三分の一強の国庫負担割合を前提とした自然増分(約四千億円)だけを盛ることになる。
基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げは、現行制度の大前提。政府・与党はこれまで繰り返し実現を約束しており、二〇〇四年の年金制度改革では来年四月の引き上げを織り込んで将来の保険料の上限、給付の下限を定めた。
しかし、次期衆院選が迫るなか、政府・与党内では消費税増税は困難との空気が大勢になりつつあり、国庫負担引き上げも来年十月以降に先送りし、必要な財源を圧縮することを検討し始めている。
ただ、国庫負担引き上げが遅れると、保険料の上限を引き上げて財源を増やしたり、給付水準を切り下げたりする制度改正につながる恐れがある。このため、与党内の一部には年金不安の一段の高まりを懸念する意見も根強い。
自民党厚労部会は二十三日にも、基礎年金の国庫負担引き上げに必要な財源の満額要求を認めるよう政府に求める決議をまとめる方針。
実際には概算要求に引き上げ財源を盛ることは難しく、決議は宙に浮く公算も大きいが、「二分の一」実現をめざす方針は変わらないとの姿勢を訴え、年金不安の広がりを食い止めたい狙いだ。