20080711 日本経済新聞 朝刊

 基礎年金の国庫負担割合を現行の三分の一強から二分の一に引き上げる時期がずれ込むと、政府が約束してきた将来の年金給付の水準を維持することに黄信号がともる。二〇〇四年の年金制度改革では保険料の上限を定めるとともに、給付水準の下限も設けた。ただこれらは国庫負担の引き上げを織り込んでおり、実施が遅れれば財源確保の条件が崩れることになる。
 現行制度では保険料負担は一七年まで段階的に増え、それ以降は厚生年金で一八・三%(労使折半)、国民年金は月一万六千九百円で固定する。給付については、現役世代の平均手取り収入に対する年金額の割合(所得代替率)が、「将来も五〇%を下回らない」と確約した。
 現在の計算では、将来の給付水準の下限は五〇・二%になっている。保険料の上限、給付水準の下限はともに、来年四月に基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げることを前提に設計してきた。仮に二分の一への引き上げが一年遅れると、約二兆三千億円の穴が開く。その分は年金の積立金を想定よりも多く取り崩すことになり、将来の給付水準は〇・二ポイント程度低下する。公約を守れるかどうかの瀬戸際だ。
 国庫負担引き上げの遅れを半年にとどめても、当初の想定に比べると一兆一千億円強が入ってこないことになる。想定以上に少子化が進んだり、経済情勢が悪化したりすれば、「五〇%を下回らない」という給付水準の保証は難しくなる。保険料の上限や積立金の活用の見直しなど制度改正論につながるだけでなく、現行の年金制度のもろさを改めて国民に印象づける結果を招くのは必至だ。政府・与党は増税論議を避けても、年金不信というもう一つの難題からは逃れられそうにない。

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