20080627 日本経済新聞 夕刊
学童保育や保育園に通いながら、学習塾や習い事を掛け持ちする子どもが増えている。受験ブームなどで共働きでも子を塾などに通わせる家庭は増える一方。小学生の場合、放課後の安全な居場所という意味でも関心は高まっている。ただ、待機児童も多いだけに途中でぬけて習い事に向かうことへの批判や、安全責任をめぐる関係者とのあつれきも聞こえ始めた。
「共働きでも子どもにほかの子と同じように習い事をさせて、得意なことをたくさんつくってあげたい」。東京の公務員Aさん(37)は小学二年の長女の教育に余念がない。放課後の預け先は民間の学童保育「キッズベースキャンプ三軒茶屋」(東京・世田谷)。そこから週四日、ピアノ、バレエ、書道、絵画教室に通わせている。
習い事の送迎はキッズベースのスタッフに頼んでいる。送迎一回で千円の費用がかかるが「公設の学童保育では送迎はやってくれない。娘の教育と安全のため仕方ない」(Aさん)と話す。
「保育先から習い事や塾に向かう子どもの送り迎えを頼まれるケースが急速に増えている」と指摘するのは「神戸市ファミリー・サポート・センター」の塩島玲子さん。同センターは子育て経験のある市民会員が、働く母親の代わりに地域の子どもの送迎や一時預かりを割安な料金で手掛けている。「ここ数年で小学生の放課後の居場所として、習い事や塾を活用する親もぐっと増えた」と話す。
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共働き家庭でも、小学生の子らに進学塾や習い事通いをさせるケースが目立ってきた。理由の一つは公教育への不安だ。ベネッセ教育研究開発センター(東京・新宿)が二〇〇七年に小中学生の親五千人を対象に調査したところ、五一%が「習い事や塾に通わせないと不安」と答えた。
多くの共働き家庭は子どもを学童保育などに預ける。そこから別の習い事に通うには送り迎えの人手が欠かせない。そこで地域のファミリー・サポート・センターなど、様々なサービスを駆使する。
ただ、共働き夫婦の思いに反し、保育先からの習い事通いには周囲からの批判やあつれきを生み始めている。
全国学童保育連絡協議会(東京・文京)の真田祐事務局次長は、学童保育と習い事の掛け持ちが広がり「子どもの安全責任をだれがとるかあいまいになった」と不安視する。学童保育では子どもの安全の責任範囲を一般に小学校から通所し、自宅に帰すまでとしており、万が一の場合に備え保険にも入っている。
だが、習い事通いの途中での事故は保険の対象外。保険金は受け取れないし、学童保育としても責任をとりきれないというわけだ。
待機児童の問題もある。自治体などが運営する学童保育は〇七年時点で全国で約一万四千人、認可保育園も約一万七千人の待機児童がいる。保育園の順番待ちを経験した神奈川県のBさん(37)も「その子が習い事に行く時間だけでも預けたいと思う待機児の親もいる。身勝手に見える」と話す。真田さんは「学童保育の中には、塾や習い事の回数が少ない子を優先的に入れる動きも出ている」と話す。
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もっとも、習い事は子どもが望んでいるのも確か。博報堂生活総合研究所(東京・港)が〇七年に小中学生の男女八百人を対象に実施した「子供の生活10年変化」調査によると、習い事を始めた理由で「自分がやりたいと思った」と答えた子どもは、五一%と半数を超えた。
同研究所の吉川昌孝上席研究員は「安全への不安から外で遊べる場が減り、習い事は今や子どもにとって大切な遊び場になった」とみる。ならば共働き家庭の子も安心して習い事に通える環境づくりが必要とも言える。そうした子を受け入れる塾などのサービスも広がり始めた。
東京の健康サービス会社役員のCさん(41)が小二の長女を放課後に通わせているのは、滞在型学習塾「エルフィー荻窪」(東京・杉並)。勉強を教える以外に娘が望む書道教室などへの送迎も頼めるからだ。「