20080630 日本経済新聞 朝刊
与野党で「たばこ増税」論議が活発になっている。日本の男性の喫煙率は四〇%弱で、米国の二四%や英国の二七%を大きく上回る。喫煙率が下がらない大きな要因が価格の低さにあるため、増税によってたばこの値段を上げて喫煙者を減らし、肺気腫や肺がん、循環器疾患などの病気を削減。国民の健康増進、国全体の医療費抑制にもつなげようとの考え方だ。
二十本入り一箱の値段が英国並みの千円程度になるよう増税した場合、販売数量の大きな落ち込みがなければ八兆円程度の税収増につながるという皮算用もある。年金改革に来年度から二兆三千億円の財源が必要になるという国の台所事情が背景にある。
だが、値上げの喫煙抑制効果は、健康と税収増の一石二鳥を狙う議員らの想定をはるかに超えるかもしれない。一箱千円になったらどうするか、喫煙者千人強に尋ねてみると、四人のうち三人にあたる七五%が「禁煙する(またはその努力をする)」と答えた。五百円に上げた場合でも四二%が禁煙に向かうという。「従来と同じだけ吸い続ける」は千円だとわずか四%、五百円でも一一%にすぎない。
増税幅がどうあれ、たばこ増税に対する政府への反発は強い。「納得できない」「増税理由が理解できない」とした人が合わせて七〇%に上った。反発の理由では「まず税金の無駄遣いをやめるべきだ」が八二%を占めた。
米国では連邦・州政府がたばこメーカーに医療費負担増の賠償を求める訴訟を起こし、数十兆円にのぼる賠償を勝ち取っている。これに対し、株主としてたばこ会社の収益配分を受け続けながら、医療費を抑制しようとする日本政府はいかにも筋が通らない。今回の調査でも「政府が日本たばこ産業(JT)株の半分を保有しながら健康のため増税するのは矛盾する」と考える人が四四%もいた。
健康増進でも医療費抑制でも、先に考えるべきはJT株の扱いではないか。国が保有するJT株の合計時価は、年金改革財源の一年分に近い二兆二千億円強にのぼる。
(編集委員 小柳建彦)
調査の方法 調査会社マクロミルを通じて六月二十―二十一日にインターネットで実施。全国の二十歳以上の喫煙者千三十人が回答。
与野党で「たばこ増税」論議が活発になっている。日本の男性の喫煙率は四〇%弱で、米国の二四%や英国の二七%を大きく上回る。喫煙率が下がらない大きな要因が価格の低さにあるため、増税によってたばこの値段を上げて喫煙者を減らし、肺気腫や肺がん、循環器疾患などの病気を削減。国民の健康増進、国全体の医療費抑制にもつなげようとの考え方だ。
二十本入り一箱の値段が英国並みの千円程度になるよう増税した場合、販売数量の大きな落ち込みがなければ八兆円程度の税収増につながるという皮算用もある。年金改革に来年度から二兆三千億円の財源が必要になるという国の台所事情が背景にある。
だが、値上げの喫煙抑制効果は、健康と税収増の一石二鳥を狙う議員らの想定をはるかに超えるかもしれない。一箱千円になったらどうするか、喫煙者千人強に尋ねてみると、四人のうち三人にあたる七五%が「禁煙する(またはその努力をする)」と答えた。五百円に上げた場合でも四二%が禁煙に向かうという。「従来と同じだけ吸い続ける」は千円だとわずか四%、五百円でも一一%にすぎない。
増税幅がどうあれ、たばこ増税に対する政府への反発は強い。「納得できない」「増税理由が理解できない」とした人が合わせて七〇%に上った。反発の理由では「まず税金の無駄遣いをやめるべきだ」が八二%を占めた。
米国では連邦・州政府がたばこメーカーに医療費負担増の賠償を求める訴訟を起こし、数十兆円にのぼる賠償を勝ち取っている。これに対し、株主としてたばこ会社の収益配分を受け続けながら、医療費を抑制しようとする日本政府はいかにも筋が通らない。今回の調査でも「政府が日本たばこ産業(JT)株の半分を保有しながら健康のため増税するのは矛盾する」と考える人が四四%もいた。
健康増進でも医療費抑制でも、先に考えるべきはJT株の扱いではないか。国が保有するJT株の合計時価は、年金改革財源の一年分に近い二兆二千億円強にのぼる。
(編集委員 小柳建彦)
調査の方法 調査会社マクロミルを通じて六月二十―二十一日にインターネットで実施。全国の二十歳以上の喫煙者千三十人が回答。