20080625 日本経済新聞 朝刊

 インターネットで生命保険を販売する「ネット生保」が本格的に動き出した。SBIアクサ生命保険が四月、ライフネット生命保険が五月からそれぞれ営業を始めた。銀行、証券、損害保険はネット販売が一般的になったが、生命保険は海外でも珍しい。成功すれば保険料の「価格破壊」などを通じ、大手生保会社の経営にも変革を迫りそうだ。
 「どこよりもわかりやすく、安く、便利な商品・サービスを提供したい」。ライフネットの出口治明社長はこう話す。商品は単純。大手生保では死亡保険の主契約に医療など多くの「特約」が付くのが一般的だが、二社とも特約はほとんどない。保障は死亡、入院、手術に絞った。
 保険料をみると、例えば三十歳男性が期間十年の定期死亡保険(保険金額三千万円)に加入する場合、ライフネットは月三千四百八十四円。配当も解約時に戻るお金もないため単純比較はできないが、ある大手生保(六千六百円)のほぼ半分。営業網を持たず、人件費を抑えられるため実現できる水準だという。
 契約申し込みは二十四時間・三百六十五日できる。ネットでほぼすべての契約手続きが可能だ。
 ライフネットは開業一カ月間に約八百件の契約申し込みがあった。SBIアクサは保険料を試算した件数が十万件を超えた。ライフネットは一二年には年百万件の新契約がネット経由になると見込む。生保全体の一割弱、最大手の日本生命に匹敵する規模だ。
 ただ、生命保険は加入後も受取人変更、保険金請求などさまざまな手続きが必要なことがある。結婚、出産などで最適な保障額が変わることもある。大手ならば担当の営業職員に相談できるが、ネット生保では原則としてすべて自分でこなさなくてはならない。
 ファイナンシャルプランナーの内藤真弓さんは「ネット生保に加入するなら契約の自己管理が欠かせない。コールセンターをフル活用すべきだ」と助言する。さらに、ネット生保は大手生保に比べると、財務基盤が劣る点は否めない。
 大手生保はとりあえず静観の構え。「(大手とネットが)バッティングするというより、それぞれのニーズにそれぞれの形で応える体制につながる」と生命保険協会の岡本圀衛会長は話す。ネット生保の登場により、大手生保は保険料に見合う質の高いサービスを提供しているか、厳しく問われることになりそうだ。