20080623 日本経済新聞 夕刊

 「一人一日一キログラムの二酸化炭素(CO2)削減」。こんな目標を掲げる定期預金がある。びわこ銀行が扱う「CO2ダイエット・チャレンジ定期」だ。
 京都議定書は温暖化ガス排出量削減をうたった。二〇一二年までに一九九〇年比六%減らす目標だ。その実現を目指すチーム・マイナス六%運動に賛同すれば預金金利を〇・二%優遇する。
 顧客に「冷房温度を二度高くする」「ごみの分別を徹底する」などと宣言してもらい、環境意識を高める。〇七年九月の取り扱い開始からすでに九千人が口座を開設。宣言通りだと年二千六百六十トンのCO2削減につながる。
 「環境は経営の中核」と強調するのは山田督(59)。滋賀大学で学び、一九七一年住友銀行に入行。関西を中心に営業畑を歩んだ。関西銀行専務、関西アーバン銀行副頭取を経て〇五年びわこ銀の頭取に。
 びわこ銀に来て顧客と話をすると、時候のあいさつ代わりに環境が取り上げられる。琵琶湖を抱える滋賀県民の水質や緑化への関心は極めて高かった。「環境に力を入れずして銀行経営は成り立たない」と痛感した。
 そこで環境預金に注力した。琵琶湖の水位予想があたると金利が上がる「エコ&チャレンジ定期」、琵琶湖の透明度が改善すれば金利が二倍になる「エコ・クリスタル定期」などを投入。CO2ダイエット・チャレンジ定期は同行としては五種類目の環境預金だ。
 一方で環境融資にも取り組んだ。太陽光発電施設設置、琵琶湖材を使った住宅建設などには優遇金利を適用した。環境配慮の個人ローンは千二百件を超え、融資残高は二百七十億円に。
 「運用、調達の両面あってこそ銀行」が山田の持論。環境に関する業務をまとめて行内に“環境銀行”を設けて、中核業務であることをはっきりさせた。
 有価証券報告書には「環境損益計算書」を載せている。環境活動に限って収益、費用の詳細、利益などを記載、株主総会でも報告する。銀行としてコストをどう考えながら環境問題に取り組んでいるかが、時系列で把握できるユニークな試みだ。
 「じぎん」。山田はこんな造語をキャッチフレーズにしている。地ビール、地酒などと同様に地元密着の銀行という意味だ。「堅苦しくなく、あたたかで、親切な銀行でありたい。それとともに地域にあった専門性のある情報、商品、サービスの提供に力を入れる」。もちろんその中核に環境をすえる。
=敬称略
(編集委員 太田康夫)
【図・写真】環境は経営の中核と位置づける山田さん