20080624 日本経済新聞 朝刊

 医療保険、がん保険、個人年金保険を合わせた契約件数が二〇〇八年三月末に前年同期比四・三%増の五千三百二十六万件となり、年度末ベースで初めて死亡保険を逆転した。病気や老後の生活費など長生きに備えるニーズが高まっている。万が一の際に備える死亡保険は少子高齢化の影響もあり、需要が縮小している。主力商品の移り変わりが鮮明で、生保各社の経営にも影響しそうだ。
 医療、がん、年金の三保険の契約件数は〇八年三月末に、生命保険協会に加盟する四十社の合計で、前年同期比で二百二十万件増えた。定期や終身などの死亡保険は二十二万件(〇・四%)減の五千九十三万件だった。
 なかでも医療と年金の伸びが目立つ。医療保険は入院すれば日額五千―一万円、手術すれば別に給付金を受け取れる。三月末の契約件数は七・四%増の千八百六十八万件で、五年前の一・八倍に膨らんだ。
 年金は千六百五十七万件と四・八%増えた。個人年金は加入時に受取額が決まる「定額年金」が主流だったが、最近は受取額が運用成績によって増減する「変額年金」が伸びている。〇二年に銀行窓口での販売が認められたこともあり、変額年金の契約件数は二百七十万件と五年前の九倍になった。
 死亡保険はかつて大手生保の主力商品だった「定期付き終身保険」が落ち込んでいる。終身保険に子育て期間中の死亡保障を厚くする定期保険を付けた商品で、ピーク時の一九九七年には約三千万件あったが、今年三月末には千四百十九万件と半分以下に減った。
 生命保険協会の岡本圀衛会長(日本生命保険社長)は「少子高齢化で死亡保障から医療、年金に契約がシフトしている」と語る。団塊世代など子育てを終えた世帯は、想定よりも長生きすることに備えて、自らがお金を受け取れる医療保険や年金に加入する傾向が強いという。公的な医療保険や年金への不安も背景にあるようだ。
 保険会社にとって年金などは一般的に死亡保険よりも利益率が低い。年金などの比重が高まれば収益力が鈍るため、経営の効率化が求められる。営業職員などの生産性向上が課題になる。
 ただ契約件数ではなく保険料でみると、日本生命保険などの大手生保は依然として死亡保険から得る保険料のほうが医療や年金よりも多い。ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんは「医療保険などの相談に来る子育て世代には、死亡保障額が必要水準に達していない人も多い」と話す。「一部の外資系生保は死亡保障をうまく販売している。大手生保はニーズを掘り起こせていない」(保険評論家の山野井良民氏)との指摘もある。