20080622 日本経済新聞 朝刊

 二〇〇八年春、インターネット専業の生命保険会社二社が誕生した。両社は営業員を持たずに経費を抑えられる強みを生かし「保険料は大手生保の三分の二」「ネットで申し込めば翌営業日に加入手続きが完了」などを売りにする。ネット生保の保険料は本当に安いのか、利用時の注意点は何かについてまとめた。
 今春開業したのは、SBIホールディングスとアクサジャパンホールディングなどが出資するSBIアクサ生命保険(東京・港)と、日本生命保険の出身者らが立ち上げたライフネット生命保険(同・千代田)の二社。いずれも若年層を主な顧客層としている。
翌日に審査結果
 両社とも最も強く訴えるのは「保険料の安さ」。大手の生命保険会社とは違い申込窓口をサイトに集約し、店舗や営業員を持たないことで保険料を抑えると説明する。
 商品が単純なのも特徴だ。ここ数年、生保や損害保険会社は「保険金の不払い」が問題になったばかり。背景には、商品が複雑になり、保険会社の技術やシステム整備が追い付かなかったことがある。「保険は複雑になりすぎた。その上、顧客への説明も不十分」(出口治明ライフネット社長)という問題意識から、商品をわかりやすくした。
 申し込みが簡便な点も売りだ。SBIアクサは申し込みがネットで完結する点を強調する。島津勇一取締役執行役員は「遅くとも申し込みの翌営業日には審査結果を通知する」と話す。
 具体的に商品の内容を見ていこう。二社とも死亡した時に保険金を支払う死亡保険と、病気などに備える医療保険を投入した。死亡保険は期間が十年などに限定される「定期保険」で、大手生保が多く扱う「終身保険」よりも保険料を抑えやすい。ファイナンシャルプランナー(FP)の内藤真弓さんは「子育て中で余裕資金が乏しくても、ある程度の死亡保険金を確保したい若い世代には使いやすい」と評価する。
 表Aのように、ネット生保二社の保険料はほぼ同条件で比べると他社商品を下回るケースが多い。特に若年層は相対的に安く、例えば三十歳で保険金一千万円のケースだと、大手の四―七割の水準だ。
 解約返戻金の有無を考慮に入れず単純に二社を比べると、保険金が一千万円で、三十、四十歳の世代ではライフネットが安い。「若い人に安く提供するため、他社とは保険料の算出方法を変えた」(同社長)からだ。
 一方SBIアクサは年齢が高い場合や保険金が五百万円など少額の場合にライフネットより安くなることが多い。FPの豊田真弓さんは「専業主婦には少額の保険金で加入する需要があり利用しやすい」と見る。
 医療保険では二社の違いが鮮明に出た(表B参照)。SBIアクサは十年間の定期保険を採用した。定期保険は契約内容を見直しやすい半面、更新するたびに保険料が年齢に応じて高くなってしまう。そこで最初の加入で十年間健康であれば、更新時の保険料が安くなる「健康チャレンジ」を採用し、継続加入の負担を和らげた。
選ぶ理由を明確に
 ライフネットは生涯保障が続く終身保険を用意した。終身型は医療制度が変わると保障内容が合わなくなるリスクがある。そこで健康保険の内容が変われば、どの手術で保険が下りるかなど保障内容も変わるように設計した。
 ただ表Cのように、二社とも給付内容を考慮すると、保険料は既存生保の通販型商品と比べても一概に安いとは言えない。特にライフネットは既存生保に比べてやや高め。同社は「既存生保は過去の加入者データを蓄積しているため、保険料を下げやすい」と説明する。
 既存の生保と差が出たのが手術時に支払われる手術給付金の額だ。ライフネットは一回の入院につき一律十万円のみで、日帰り入院は保障の対象外。保障額だけを見ると、疾病に応じて入院日額の最高四十倍までカバーする他社商品に見劣りする面がある。
 入院日数の短期化を理由に「入院日数に応じて支払われる入院給付金より、手術給付金の額を重視した方がいい」という見方がある。一方でネット生保二社は、複雑な保障内容や特約の多さが請求漏れにつながりやすいとの認識から、金額は低めながら保障内容を簡潔にした。どちらがいいかの判断は、手術給付金をどう位置付けるかで分かれそうだ。
 医療保険については「公的医療保険が手厚いため、医療保険に入らず貯蓄で備える選択肢もある。加入するならば何の費用を補うためかを明確にすべきだ」(内藤さん)という意見もある。医療保険を選ぶ時は、給付内容のわかりやすさや費用対効果の高さなど各社の長短を理解して選ぼう。
【図・写真】ライフネット生命保険のセミナーには若手サラリーマンらが数多く集まった