20080618 日本経済新聞 夕刊

 加入者の運用実績に応じて受け取る年金額が変わる確定拠出年金制度(日本版401k)を導入した企業が、二〇〇八年三月末で一万社を超えたことが分かった。加入者は二百七十一万人に達し、専用投資信託の残高も増えている。昨年夏以降の株式相場低迷で年金資産の運用は厳しく、確定拠出年金の普及が一段と進みそうだ。
 厚生労働省の調べによると、〇八年三月末時点の導入社数は一万三百三十四社と一年前に比べ一九%増えた。代表的な企業年金である厚生年金基金の加入企業数(十二万四千社)の八%程度に相当する。
 全面的に確定拠出に変更する企業と、部分導入の両方がある。前年度は日本通運や野村総合研究所、東京電力、東京海上日動火災保険が部分的に導入。日本興亜損害保険は今年度から確定拠出年金に全面移行した。
 日本で主流の確定給付年金制度では企業が支払う年金額を約束し、年金資産の運用に責任を負う。〇七年度の企業年金の運用利回りは九・九一%のマイナス(R&I調べ)と五年ぶりにマイナスになり、企業負担の増加は確実だ。一方、確定拠出年金は、加入者が運用責任を負うため、損失が発生しても企業が穴埋めする必要がない。
 確定拠出年金の加入者数は三月末で二百七十一万人と一年前に比べ二四%増加。大企業から中小企業へ導入のすそ野が広がっている。厚生年金基金と並ぶ企業年金で、中小企業が多く活用する税制適格年金制度が一二年に廃止になることも導入を促す一因だ。確定給付型の企業年金の加入者数は千四百万人強で、確定拠出の加入者数は二割弱に達している。
 加入者増加を受けて、専用投信の残高も増えている。QUICKの調査子会社QBRによると、確定拠出年金の専用投信運用残高は三月末で一兆一千五百九十八億円。相場低迷の影響があるとはいえ、一年前に比べ残高は七%増になった。
 確定拠出年金の資産残高は三兆円強とみられ、確定給付型の企業年金の資産残高八十一兆円強に比べるとまだ小さい。大手年金コンサルタント会社のワトソンワイアットの推計によると、米国では年金資産総額十五兆二百六十億ドルのうち五六%程度が確定拠出で運用されているという。
 確定拠出年金は企業が運用リスクを従業員に移転している側面がある。従業員のリスク負担が増す懸念や、法人税が非課税となる年金資産拠出額の上限がまだ低いなど税制面での制約から、ホンダやソニー、東芝など確定拠出年金を導入していない大企業も少なくない。