20080616 日本経済新聞 朝刊

 夏のボーナスの支給が近づいてきた。「お隣」はボーナスをどう使うのだろう。日経生活モニター対象の調査では、生活必需品の価格が上がる中、熟年層を中心にボーナスで生活費を補てんする人が目立ち、防衛色がにじみ出た。一方、若年層はむしろ「貯蓄や投資で増やして家計を守る」と“積極防衛”に動いている。
 「今年は旅行に行けそうにない」。兵庫県のパート職員、竹中典子さん(48)は残念そう。ボーナスの額は昨年並みを予想するが、食料品や車通勤のガソリン代が家計に重くのしかかる。車通勤を自転車に切り替えたが、それでもボーナスの八割程度が生活費補てんに消えそうだ。
  旅行など
「減らす」28%
 二〇〇八年夏のボーナスについて、楽観的な人は少ない。〇七年夏より「増えると思う」と答えたのは一五%にとどまり「減ると思う」が三五%。年齢別にみると、二十代と三十代では二割近くが「増える」と予想するが、五十代で「増える」とするのはわずか一割で「減る」が約四割。教育費や住宅ローン返済が頂点に達するこの世代が特に悲観的だ。
 物価上昇などで家計は厳しい。生活費補てんの割合を昨年夏より増やすか減らすか聞いたところ、増やす人が二七%で、減らす人は一一%。
 回答者の人数を考慮して加重平均すると、ボーナスの二一%が生活費補てんに回りそう(グラフ(1))。支給額が百万円なら二十一万円が生活費補てんに回る計算だ。
 一方、旅行・レジャー費に回るのは一三%、つまり百万円のうち十三万円で、耐久消費財購入は九%。ともに昨年夏より減らす傾向が強い(グラフ(2))。旅行・レジャーは「増やす」と答えたのが一四%にとどまったのに対し「減らす」が約二倍の二八%。耐久消費財も北京オリンピックがあるにもかかわらず全年齢層で「減らす」割合が「増やす」を上回った。
 昨年夏に比べ家計を圧迫しているのが何かも聞いた。トップはやはり「食費の上昇」で三六%。ついで「ガソリン代を含む交通費」が二九%だった(グラフ(3))。原油や穀物などの高騰がボーナスの使い道にまで影響を及ぼしている。
 ガソリン代
  高騰響く
 「車がないと生活できず、ガソリン代高騰でボーナスが月々の赤字補てんに消えてしまう」と嘆くのは滋賀県の会社員、原武さん(仮名、53)。千葉県の会社員、本田敬さん(仮名、44)も「物価が上がったがボーナスは減額が決定。耐久消費財購入や貯蓄に回す余裕がない」とため息。
 生活防衛色が濃いボーナスの使い道。だが年齢別にみると防衛策の方向がだいぶ違う。四十代と五十代ではボーナスが百万円とすると二十五万円前後を生活費補てんに充てるが、三十代は十七万円、二十代は十二万円にとどまる。
 若年層で生活費の代わりに増えるのが貯蓄と投資だ。二十代は半分以上を貯蓄し、さらに一割以上を投資に回す。三十代も貯蓄と投資の合計が五割を超える。
 東京都の会社員、沢健一郎さん(39)は「生活用品が値上がりしているからこそ、お金には休まず働いてもらいたい」と、貯蓄に六割、投資に二割を充てる予定。ともに割合を昨年より増やし、積極防衛に打って出る。
 ファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦さんは「食料品やガソリンだけでなく、固定費の光熱費も上昇している」と指摘。こまめに節約するだけでは値上がりが努力を帳消しにしてしまいがちだ。「投資などで積極的に資産を増やして防衛することも必要だ」と助言している。