20080607 日本経済新聞 地方経済面
七十五歳以上の高齢者を対象とする「後期高齢者医療制度(長寿医療制度)」が始まって二カ月余り。首都圏の各自治体の窓口では制度開始当初のような殺到する問い合わせはなくなった。とはいえ、制度の内容が浸透したわけではない。分かりにくさに輪をかけるように、今も進む改変議論が混迷を深める要因になっている。
東京都足立区内の地域センター会議室に六月上旬、十数人の高齢者が集まり、高齢医療・年金課の職員の説明に熱心に耳を傾けた。A4判八ページの資料を使い、後期高齢者医療制度の概要や年金天引きによる徴収方法などを解説していく。
自分の保険料を算出するチャート図を配ると、出席者は口々に「急に言われても計算できない」とお手上げの様子だ。約一時間半後に説明会は終了したが、近所の男性(81)は「誰がどれくらいの保険料を払うかなど、何度聞いても分からない」と、ため息をついていた。
制度開始から二カ月がたち、自治体の窓口への問い合わせは大幅に減った。神奈川県後期高齢者医療広域連合では四月は一日八百件にのぼる日もあり、「電話を切ったらすぐに次の電話」という状況だった。最近は数十件におさまったが、お年寄りが制度を理解したからというわけではなさそうだ。
各自治体は今も制度の周知に頭を悩ませる。東京都の広域連合は五月末、何とか制度を知ってもらおうと、概要を説明した新聞の折り込みチラシ約四百二十七万枚を都内全域で配布した。七月にも通知書類の見方などを解説した折り込みチラシを配布する予定だ。
ただ、制度が変わったことは分かっても、いざ自分の払う金額はいくらになるのか、間違って引き落とされはしないかと疑念は晴れない。
神奈川県厚木市は五月中旬から下旬にかけて、市内の十五カ所で個別相談を実施した。仕組みはもちろん、保険料の算定方法などをそれぞれに説明した。宇都宮市も二十―三十人を集めた「出張ミニ説明会」を開いている。
制度浸透が不十分なところに問題をややこしくしているのが政府・与党の見直し議論だ。まだ数は少ないものの、各自治体には高齢者から「今度はどう変わるのか」という問い合わせが届く。
ある県の広域連合の担当者は「説明したくても、国から通知を受けていないため対応できない」と打ち明ける。
新制度が早くもまた変わりそうとあって「政府の見直し議論が進むと、我々の説明の信ぴょう性を疑われかねない」。自治体の現場からはこんな声があがる。近藤弥生・足立区長は「正直困惑している」と弱り顔だ。
群馬県安中市では一時、独自の助成を検討したが「見直し議論の結論が出ないうちに助成方法を決めるわけにもいかない」(国保年金課)と困惑する。宇都宮市内に住む八十歳代の女性はネコの目のように変わる状況に「どうなっているのかさっぱり分からない。そもそも後期高齢者という言葉自体が人をバカにしている」と怒る。
福田康夫首相の地元、群馬県内の自治体担当者からも「国の対応は後手後手になっている」との声が漏れる。
▽埼玉県桶川市…
後期高齢者医療制度の被保険者が人間ドックを受ける際に1人当たり年2万5000円の補助金を出す方針。1500円かかる特定健康診査の受診料も無料にする方針
▽東京都渋谷区…
後期高齢者医療制度の保険料の支払いで、年金からの天引きか、納付書による支払いか選択できる制度を検討中
七十五歳以上の高齢者を対象とする「後期高齢者医療制度(長寿医療制度)」が始まって二カ月余り。首都圏の各自治体の窓口では制度開始当初のような殺到する問い合わせはなくなった。とはいえ、制度の内容が浸透したわけではない。分かりにくさに輪をかけるように、今も進む改変議論が混迷を深める要因になっている。
東京都足立区内の地域センター会議室に六月上旬、十数人の高齢者が集まり、高齢医療・年金課の職員の説明に熱心に耳を傾けた。A4判八ページの資料を使い、後期高齢者医療制度の概要や年金天引きによる徴収方法などを解説していく。
自分の保険料を算出するチャート図を配ると、出席者は口々に「急に言われても計算できない」とお手上げの様子だ。約一時間半後に説明会は終了したが、近所の男性(81)は「誰がどれくらいの保険料を払うかなど、何度聞いても分からない」と、ため息をついていた。
制度開始から二カ月がたち、自治体の窓口への問い合わせは大幅に減った。神奈川県後期高齢者医療広域連合では四月は一日八百件にのぼる日もあり、「電話を切ったらすぐに次の電話」という状況だった。最近は数十件におさまったが、お年寄りが制度を理解したからというわけではなさそうだ。
各自治体は今も制度の周知に頭を悩ませる。東京都の広域連合は五月末、何とか制度を知ってもらおうと、概要を説明した新聞の折り込みチラシ約四百二十七万枚を都内全域で配布した。七月にも通知書類の見方などを解説した折り込みチラシを配布する予定だ。
ただ、制度が変わったことは分かっても、いざ自分の払う金額はいくらになるのか、間違って引き落とされはしないかと疑念は晴れない。
神奈川県厚木市は五月中旬から下旬にかけて、市内の十五カ所で個別相談を実施した。仕組みはもちろん、保険料の算定方法などをそれぞれに説明した。宇都宮市も二十―三十人を集めた「出張ミニ説明会」を開いている。
制度浸透が不十分なところに問題をややこしくしているのが政府・与党の見直し議論だ。まだ数は少ないものの、各自治体には高齢者から「今度はどう変わるのか」という問い合わせが届く。
ある県の広域連合の担当者は「説明したくても、国から通知を受けていないため対応できない」と打ち明ける。
新制度が早くもまた変わりそうとあって「政府の見直し議論が進むと、我々の説明の信ぴょう性を疑われかねない」。自治体の現場からはこんな声があがる。近藤弥生・足立区長は「正直困惑している」と弱り顔だ。
群馬県安中市では一時、独自の助成を検討したが「見直し議論の結論が出ないうちに助成方法を決めるわけにもいかない」(国保年金課)と困惑する。宇都宮市内に住む八十歳代の女性はネコの目のように変わる状況に「どうなっているのかさっぱり分からない。そもそも後期高齢者という言葉自体が人をバカにしている」と怒る。
福田康夫首相の地元、群馬県内の自治体担当者からも「国の対応は後手後手になっている」との声が漏れる。
▽埼玉県桶川市…
後期高齢者医療制度の被保険者が人間ドックを受ける際に1人当たり年2万5000円の補助金を出す方針。1500円かかる特定健康診査の受診料も無料にする方針
▽東京都渋谷区…
後期高齢者医療制度の保険料の支払いで、年金からの天引きか、納付書による支払いか選択できる制度を検討中