20080604 日本経済新聞 朝刊
二〇〇九年度の実現をめざす基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げを巡り、政府内の前哨戦が夏にかけて本格化する。厚生労働省内では、引き上げに必要な二兆円余りを来年度予算の概算要求に盛る案が浮上。一方、財務省は概算要求の枠外とし、秋以降の予算編成過程に検討を持ち越す構えだ。
04年改革で明記
「できるかできないかではなく、やるしかないんだ」。厚労省幹部は基礎年金の半分を国庫負担(税)で賄うことは政府の既定方針だと力説する。財源を考えるのは財務省であり、厚労省にとって新たに増える二兆円余りの歳出は「予算の自然増」という論法だ。
財務省が年二千二百億円ずつの社会保障費の抑制目標の堅持を求めているのに加え、税制改革など大きな政治判断が必要な予算措置は夏の概算要求に盛らず、「予算編成過程」に先送りするのが慣例だ。厚労省の論法は霞が関の「おきて破り」ともいえるが、こうした分かりにくい議論が浮上するのには訳がある。
基礎年金は三分の一強を税、残りを保険料で賄っている。税部分の引き上げは現行制度の大前提。〇四年改革で年金改革法の本則に二分の一と明記し、付則で実現への道筋を示した。厚生年金保険料を一七年以降、上限の一八・三%で固定するのも、二分の一の国庫負担が前提となる。
政府が「骨太方針」などで何度も確認してきた「〇九年度までに二分の一を実現する」には、実施年度を定める法律と、財源を確保する税制改正の二つの法整備が要る。政府・与党は税制改革の議論を前倒しする方針だが、消費税率に換算して一%分に当たる財源のメドは立っていない。
「二分の一」を実現できなければ、保険料負担の上限引き上げなどの議論は避けられない。政府の社会保障国民会議は基礎年金の財源を全額税で賄う方式も検討課題としているが、現行制度の土台が崩れれば年金不信は一段と深まる。
ゼロの可能性も
法整備をできずに〇九年度が過ぎると、基礎年金に税投入する法的根拠を失う恐れもあるという。厚労省は予算計上に支障が生じ、国庫負担が一気にゼロになる可能性さえ指摘する。
今月まとめる「骨太方針二〇〇八」では歳出抑制の継続に加え、「歳入改革」という名の増税路線をどう描くのかも焦点。仮に政府・与党が足並みをそろえても、参院を支配する野党が増税に賛同する望みは薄い。
厚労省は政府内の議論に火を付け、国庫負担問題への関心を喚起しようと急ぐ。だが、それ以前に、財務省をはじめ政府や与党の関心は社会保障費の抑制問題に集中し、「二分の一」論議を先延ばしする空気が漂う。
そんな空気を察知した自民党の厚労関係合同部会は五月二十七日、社会保障費削減に反対する決議をまとめた。「二分の一」問題に触れつつ、新たな財源が必要なときに社会保障費を削減することは「国民の理解を得られない」と訴える。
二〇〇九年度の実現をめざす基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引き上げを巡り、政府内の前哨戦が夏にかけて本格化する。厚生労働省内では、引き上げに必要な二兆円余りを来年度予算の概算要求に盛る案が浮上。一方、財務省は概算要求の枠外とし、秋以降の予算編成過程に検討を持ち越す構えだ。
04年改革で明記
「できるかできないかではなく、やるしかないんだ」。厚労省幹部は基礎年金の半分を国庫負担(税)で賄うことは政府の既定方針だと力説する。財源を考えるのは財務省であり、厚労省にとって新たに増える二兆円余りの歳出は「予算の自然増」という論法だ。
財務省が年二千二百億円ずつの社会保障費の抑制目標の堅持を求めているのに加え、税制改革など大きな政治判断が必要な予算措置は夏の概算要求に盛らず、「予算編成過程」に先送りするのが慣例だ。厚労省の論法は霞が関の「おきて破り」ともいえるが、こうした分かりにくい議論が浮上するのには訳がある。
基礎年金は三分の一強を税、残りを保険料で賄っている。税部分の引き上げは現行制度の大前提。〇四年改革で年金改革法の本則に二分の一と明記し、付則で実現への道筋を示した。厚生年金保険料を一七年以降、上限の一八・三%で固定するのも、二分の一の国庫負担が前提となる。
政府が「骨太方針」などで何度も確認してきた「〇九年度までに二分の一を実現する」には、実施年度を定める法律と、財源を確保する税制改正の二つの法整備が要る。政府・与党は税制改革の議論を前倒しする方針だが、消費税率に換算して一%分に当たる財源のメドは立っていない。
「二分の一」を実現できなければ、保険料負担の上限引き上げなどの議論は避けられない。政府の社会保障国民会議は基礎年金の財源を全額税で賄う方式も検討課題としているが、現行制度の土台が崩れれば年金不信は一段と深まる。
ゼロの可能性も
法整備をできずに〇九年度が過ぎると、基礎年金に税投入する法的根拠を失う恐れもあるという。厚労省は予算計上に支障が生じ、国庫負担が一気にゼロになる可能性さえ指摘する。
今月まとめる「骨太方針二〇〇八」では歳出抑制の継続に加え、「歳入改革」という名の増税路線をどう描くのかも焦点。仮に政府・与党が足並みをそろえても、参院を支配する野党が増税に賛同する望みは薄い。
厚労省は政府内の議論に火を付け、国庫負担問題への関心を喚起しようと急ぐ。だが、それ以前に、財務省をはじめ政府や与党の関心は社会保障費の抑制問題に集中し、「二分の一」論議を先延ばしする空気が漂う。
そんな空気を察知した自民党の厚労関係合同部会は五月二十七日、社会保障費削減に反対する決議をまとめた。「二分の一」問題に触れつつ、新たな財源が必要なときに社会保障費を削減することは「国民の理解を得られない」と訴える。