20080602 日本経済新聞 朝刊

 世界的なインフレ懸念で長期金利が上昇傾向にある。住宅ローンの利用を考える人にとって悩ましい問題だ。国債金利に連動して六月のローン金利も上がる。「できるだけ低金利で借りたい」と焦りがちだが、金利変動のリスクなどもよく見極める必要がある。
 住宅ローン選びでまず気になるのが貸出金利だろう。今のような金利上昇局面では、以前に立てた資金計画も狂いがち。店頭に表示された一番低い金利のローンに目がいくのも無理はない。
 だが「看板」の金利が低いといっても、必ずお得な商品とは限らない。金利の種類や将来の金利動向で支払総額が変わるからだ。
 三千万円を三十五年間で返すと想定する。まず金利のタイプをどうするか。半年ごとに金利改定がある「変動金利型」、三―二十年など一定期間中は金利が同じ「固定期間選択型」や、金利が変わらない「全期間固定型」などがある。全期間型では住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)と民間銀が手を組んだ「フラット35」と、各行が独自展開する商品がある。
 大手銀行は固定期間選択型を中心に、給与振込口座の開設など一定条件を満たせば「店頭表示金利から一%引き」といった優遇策を実施。みずほ銀行の場合、六月実行分(全期間優遇)は五年固定で年二・七%。十年は二・九五%、二十年は三・七%と、固定が長くなるほど金利は高い。当初の支払額は五年固定なら月々約十一万円だが、二十年固定は十二万七千円と一万七千円近く高い。
 だが固定期間が長いほど金利上昇のリスクを受けにくくなる。五年固定の場合、固定期間終了後の六年目に金利が一%上昇していると毎月の支払額は一万五千円増える。二十年固定なら増加は九千円で済む。金利が二%上がれば増加額はそれぞれ二倍で、五年固定は毎月三万円、二十年固定は一万八千円。金利情勢によっては、二十年固定の方が総支払額が少なくなることも起こりうる。
 住宅ローンで一般的な元利均等返済では、当初は大半が金利返済に回る。固定期間が長いほど元本部分の返済が進み、それだけ金利上昇による影響を小さくできる。逆に金利が下がっていれば負担軽減効果は短期固定の方が大きいが、金利上昇のリスクに備えるのがより堅実だろう。
 全期間固定型なら金利変動のリスクがなく、金利も二十年固定より低いものがある。ただフラット35は物件価格の八〇%など融資額の上限を設ける例が多く、審査に時間がかかりがちだ。
 住宅ローン関連の助言業務を手掛けるホームローンドクター(東京・中央)の淡河範明社長は「自分が払えるのはここが限界という金額を決め、金利が上がっても限度内に収めるようにするのが大切だ」と話す。
 「固定期間は十年にすべきか、もっと長くした方がよいか」。最近の相談は金利の固定期間に関するものが多いという。数年前は「固定は三年でよいか」といった相談が多かったが、相談者が検討の前提とする固定期間が長くなっている。
 優遇金利でも当初固定期間が終われば本来の金利に戻ったり優遇幅が少なくなったりする「当初優遇」と、固定期間後も優遇が続く「全期間優遇」型かをチェックすべきだ。当初優遇の方が金利は低いが、変動金利への切り替え時に金利が上昇していたら負担は一段と重くなる。
 表面的な金利だけでなく、負担が増える時期が教育などの出費がかさむ時期と重ならないか、総支払額がどうなるかなど総合的な資金計画を立てるべきだろう。
 借入期間中に死亡した際にローンの残額を支払う「団体信用生命保険(団信)」の保険料などにも注意した方がよい。表面金利が高くても団信保険料や保証料が含まれている場合、総支払額が小さくなることもある。
 ローンを借りている人の借り換えも同じ。当初固定期間が終わり、金利が低めのローンに借り換える人もいるだろうが、将来の金利上昇で総支払額がどう変化するかを計算してみるべきだ。抵当権の登記などの諸費用も勘案し、借り換えの負担軽減効果をよく吟味したうえで決めたい。
 金利上昇時の負担増を具体的に想定し、ローン以外の出費との兼ね合いも考えて、自分に合う「借り方」を判断するのが大切だ。(亀井勝司)