20080530 日本経済新聞 朝刊

 福田首相が社会保障費の抑制目標を維持する意向を示したのは、同目標が小泉政権以来の改革路線の象徴的な存在でもあるからだ。政府・与党内には「二千二百億円の抑制目標を撤廃すれば文教や公共事業などにも波及し、政府の歳出削減計画は破綻する」と懸念する声もある。(1面参照)
 二〇〇九年度予算案は六月下旬にもまとめる骨太方針で路線を定め、八月の概算要求基準(シーリング)で大枠を決める。社会保障費の抑制が二千二百億円になるか決まるのはシーリング段階。ただ、財源のめどがたたない歳出は検討事項と位置付けて、年末の予算編成で扱いを決める。
 「二千二百億円抑制」を守る場合に焦点となるのが、首相指示で検討が始まった後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の改善策。内容により二百億―二千億円の財源が必要とされる。これを拠出した場合は、二千二百億円の目標に上乗せして歳出を減らさねばならない。医療費抑制に逆風が吹く中でさらなる歳出削減は難しいため、政府・与党ではこれらの歳出をシーリングで「検討事項」とし、決着を先送りする手法が浮上している。
 いったん目標を守った形にし、年末にかけて、例えば補正予算や社会保障費以外の地方交付税から財源を出す――。この場合は「見せかけの歳出削減」との批判は必至だ。また与党内では特別会計の余剰金から「埋蔵金」を見つけ出して充当しようとの動きもある。
 首相はこれまで抑制目標の維持について「検討中」と述べるにとどめていた。公式の方針が示されないまま、与党内で目標撤廃を目指す動きが勢いづいてしまった。補正予算などの「抜け道」を使わず、実体を伴った歳出削減路線が継続できるか、年末にかけて首相の胆力が問われ続ける。