20080528 日本経済新聞 朝刊

 社会保障費の自然増分を毎年二千二百億円抑制する政府目標が達成できなくなる懸念が強まってきた。後期高齢者医療制度への批判を受け、自民党の厚生労働関係合同部会は二十七日、二〇〇九年度は削減を見送るべきだと決議した。厚生労働省も「別枠」で社会保障費を要求する検討を始めた。社会保障費の抑制は国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を一一年度に黒字にするための前提で、財務省などの反発は必至。〇九年度の予算編成で最大の焦点となりそうだ。
 二十七日の自民党の合同部会では「社会保障費の抑制は医療の崩壊につながる」との声が相次いだ。これに関連し、舛添要一厚生労働相は同日の会見で二千二百億円の抑制は「限界に近い」としたうえで、「無駄を省いて行政改革という話もあるが、国民の生命のためになることにはきちんと予算をつけることも必要」と強調した。
 二千二百億円の社会保障費の抑制は「骨太方針二〇〇六」に盛り込まれ、〇七年度予算から実行された。診療報酬の引き上げといった制度改正で社会保障費が増える場合、その分は目標に上乗せし、〇七年度と〇八年度は差し引きで二千二百億円の抑制を達成した。
 ところが、厚労省は〇九年度予算では雇用保険の国庫負担の削減などで二千二百億円を抑制する一方、医師不足対策や後期高齢者医療制度の改善策で必要な予算は「別枠」で要求することを検討中だ。例えば別枠が五百億円の場合、これを目標に上乗せせず、差し引き千七百億円分しか抑制しないことになる。
 厚労省は「一般財源化される道路特定財源を社会保障費の別枠分だけ削減すれば、一一年度に基礎的財政収支を黒字化するという政府目標は達成できる」と主張する。
 しかし、道路予算をどこまで削れるかは現段階では不透明だ。しかも道路予算については教育や政府開発援助(ODA)などの分野も獲得を狙っており、厚労省の思惑通りにいくかは未知数だ。
 六月中旬にもまとめる「骨太方針二〇〇八」で福田康夫首相がどこまで社会保障費の抑制に強い姿勢を見せるかが当面のヤマ場となる。