20080515 日本経済新聞 朝刊

 政府・与党は七十五歳以上の高齢者を対象に四月から導入した後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の改善策づくりに動き出した。所得が低いのに保険料が上がった人への負担軽減策などが焦点。だが、高齢者に応分の負担を求めるのが新制度の柱であるだけに大幅な改革は想定しない。改善策として浮上した項目でも財源などで限りがあり、とりまとめのメドとする六月中旬に向けた調整は難航必至だ。
 厚生労働省は十四日、都内に地方自治体の担当者を集めた会議を開いた。自民党も同日、谷垣禎一政調会長が鈴木俊一社会保障制度調査会長に具体的な検討開始を指示。参院政策審議会も会合を開くなど議論を本格化させた。二度目の年金からの保険料天引きがある六月十三日を念頭に、政府・与党としての対策をまとめたい考えだ。
 対策の柱となるのが負担軽減のあり方。厚労省は低所得者ほど保険料負担が下がると説明してきたが、新制度発足で自治体独自の軽減措置がなくなり、負担増になる事例が相次いだためだ。
 厚労省は負担増減に関する実態調査の結果を踏まえ(1)新制度の運営主体となる都道府県単位の広域連合が新たに低所得者向け負担軽減策を創設する(2)国はそのための財政支援をする――案を軸に検討する。
 与党も基礎年金(満額で月六万六千円)以下の収入しかない世帯の保険料の大幅減免などを検討する。低所得者向け支援に加え、会社員の子供に扶養されている高齢者の保険料免除を十月以降も一年程度延長するなど、与党はより幅広い負担軽減策も視野に入れる。
 与党内には、衆院議員の任期満了が来年九月に迫り、衆院解散・総選挙が視界に入ってくる中で「負担増が実施されるたびに批判にさらされてはたまらない」との思いがある。後期高齢者ではないが、七十―七十四歳の負担軽減策も検討。現役並み所得者以外は来年四月から窓口負担が一割から二割に上がる措置を一年程度、先送りする案も浮上している。
 問題は財源だ。例えば七十―七十四歳の窓口負担軽減には約千四百億円が必要だが、これらをどう捻出(ねんしゅつ)するかの議論はこれから。厳しい財政事情を背景に政府・与党内にも慎重論があるほか、幅広い負担軽減策を続けると制度の趣旨があいまいになる懸念もある。
 一方、民主党は十四日の「次の内閣」会合で野党四党で参院への提出を目指す制度廃止法案の中間報告を了承した。来年四月の制度廃止と保険料の年金天引きの早期中止が柱で、現行制度が続く間の低所得者の負担も軽減する。民主党も必要な財源や対案の本格検討は遅れており、党内にも「無責任との批判を浴びかねない」(代表経験者)との懸念が出ている。
 ▼後期高齢者医療制度 七十五歳以上の高齢者らを対象にした医療保険制度。国民健康保険などから対象者を切り離して運営する。医療給付費を賄う財源は、高齢者が払う保険料で一割、若い世代の保険料で四割、税金で五割を負担する。二年ごとに高齢者の負担割合を見直す。保険料は都道府県ごとに異なり、生活保護者らを除き、所得などに応じて払う。高齢者が医療機関で診療を受ける際の窓口負担は原則一割で従来通り。