20080512 日本経済新聞 朝刊
二〇〇九年度予算での社会保障費の抑制をめぐる政府・与党の攻防が激しさを増してきた。厚生労働省は「削減策は限界にきている」として年間二千二百億円ずつ抑制する政府目標の見直しを要望、与党内にも同調論がある。財務省や内閣府は「歳出削減路線の転換につながる」と警戒。六月下旬の経済財政運営の基本方針(骨太方針二〇〇八)の策定に向け、前哨戦は熱を帯びそうだ。
■関係議員が幹部会合 「これ以上削り込めといっても無理だ」。九日午前、自民党の尾辻秀久参院議員会長や鈴木俊一社会保障制度調査会長ら厚生労働関係議員は幹部会合を都内で開催。社会保障費の伸びを二〇一一年度まで年二千二百億円ずつ圧縮する「骨太方針二〇〇六」で定めた方針の見直しを求めていくことを確認した。
政府管掌健康保険の国庫負担を企業の健康保険組合に肩代わりさせる法案は、民主党の反対で今国会成立の見通しが立たない。与党候補が敗北した衆院山口2区補欠選挙では後期高齢者医療制度が批判された。
丹羽雄哉前総務会長は十一日のフジテレビ番組で、自民党の伊吹文明幹事長は同日午後の山形市の講演でそれぞれ社会保障費の圧縮方針は「限界にきている」との認識を強調。厚労省は近く医師増員と財政出動の必要性を提言、政府の社会保障国民会議による六月の中間報告に反映させ、「骨太〇八」で路線修正するシナリオを描く。
■「改革路線の象徴」 だが、小泉政権が最後にまとめた「骨太方針二〇〇六」は二〇一一年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を初めて掲げ、安倍政権にも引き継がれた「改革路線の象徴」。政府高官は「社会保障でタガが外れれば歳出拡大圧力が止まらなくなる」と解説する。
「歳出削減路線は堅持すべきです」。五日の「骨太〇八」の勉強会での大田弘子経済財政担当相の訴えに、首相は大きくうなずいた。社会保障国民会議を担当する伊藤達也首相補佐官も「病院や医師の配置の見直しなど医療システムの再構築が必要だ」と強調する。
歳出・歳入一体改革は〇六年当時、自民党政調会長だった中川秀直氏と、経済財政担当相の与謝野馨氏が中心となってとりまとめた。枠組みの見直しは、両氏がそれぞれ主張する「増税なしの経済成長」と「増税も辞さぬ財政再建」の路線対立を先鋭化させるだけではない。「財政収支黒字化」という重しが外れ、政府・与党の議論が混迷する恐れがある。
■内閣の命運左右も 政府内には「道路特定財源の一般財源化で浮く分を通常の概算要求基準(シーリング)の枠外と位置づけ、社会保障などに回す」案も浮上。ただ道路族には一般財源化への抵抗が強く、浮く財源も数千億円規模とみられる。
年金記録漏れ問題、後期高齢者医療制度など社会保障分野は内閣支持率の低下を招く「政権の鬼門」。取り扱いを誤れば、福田内閣の命運が左右される可能性もある。