20080509 日本経済新聞 朝刊
財務省は八日、雇用保険制度の財源の一定割合をまかなっている国庫負担を二〇〇九年度から廃止する検討に入った。社会保障費の伸びを毎年二千二百億円圧縮する政府計画に組み入れる狙いだ。雇用保険の積立金残高が五兆円近くに達し、国の負担なしでも給付に影響はないと判断した。同省は介護保険についても、利用者の自己負担率上げに向けて厚生労働省と調整する構えで、社会保障費抑制を巡る攻防が強まる。(社会保障費の抑制計画は3面「きょうのことば」参照)=解説5面に
国庫負担の廃止は、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が六月の建議に盛り込む。
政府は社会保障費の自然増分を年平均で二千二百億円抑制する目標を掲げているが、医療サービスの充実など歳出増圧力は強まる一方で目標達成は不透明だ。〇八年度からは政府管掌健康保険の国庫負担を企業の健康保険組合などに肩代わりさせる予定だったが、特例法案の国会審議にメドが立たず、宙に浮いたまま。雇用保険への拠出をなくすことで、社会保障費削減の原資とする計画だ。
雇用保険の財源は労使が折半して拠出する約二兆円のほか、国が一三・七五%にあたる千六百億円を負担している。ただ、雇用情勢が好転したことによって労働保険特別会計の積立金は〇八年度末に四兆九千億円(予算ベース)と過去最大の規模に膨らむ見通し。これは失業手当の給付額の三年分に相当する。
また、雇用保険の支出も一・七兆円とピーク時より一兆円減っており、財務省は国庫負担分を打ち切っても給付に支障はないとみている。失業給付を国庫負担する主要国はドイツのみであることも、見直しの背景にある。
ただ、反発も予想される。厚労省は雇用保険の国庫負担を育児休業支援などに充てるよう主張。企業や労働組合などから国庫負担の廃止より保険料率の引き下げが先決との声があがる可能性もある。将来、失業給付が増えた際に保険料率の引き上げにつながることを懸念する声も出そうだ。
一方、財制審は介護保険のサービスを受けた際に支払う自己負担割合についても、現行の一律一割から一部に限って二割に引き上げる検討を始める。軽度者を対象にした「生活援助」サービスの利用を抑制し、数百億円の国庫負担削減を見込む。
介護に投じる国庫負担は〇八年度予算で約一・九兆円。政府試算では介護給付費は二五年度までに二・六倍に膨らむ。制度の枠組みが甘く、際限なく負担が膨らみかねないとして、財務省は〇九年度から始まる介護事業計画にあわせて厚労省に給付抑制を迫る方針だ。
介護保険を巡っては総選挙を控える与党が「負担増」の政策を敬遠するとみられ、雇用保険よりハードルは高い。ただ税制の抜本改革の行方が見通せない中で、医療や介護など高齢化の進展に伴って増え続ける社会保障費の「本丸」の抑制を見送れば、将来世代に財政赤字というツケを先送りすることになる。