20080508 日本経済新聞 朝刊

 日本が高貯蓄を誇った時代は過ぎ、可処分所得からどの程度が貯蓄に回ったかを示す個人の貯蓄率は米国並みまで下がりつつある。
 米国の貯蓄率は二〇〇七年は〇・四%だが、今後下げ止まる公算が大きい。住宅を担保にした借り入れによる消費が、住宅バブル崩壊で減る見通しだからだ。米国では借り入れ依存の消費膨張が低貯蓄率の原因だった。一方、日本の貯蓄率低下は高齢化という構造的な面が大きい。貯蓄率は〇六年度に最低の三・二%となったが、賃金の伸び悩みもあり、緩やかな低下が続いている可能性が高い。
 そんな中で影響力を強めているのは、高齢者の「貯蓄取り崩し型」の消費だ。高齢者の比率が高まっているだけでなく、消費水準も決して低くないからだ。
 家計調査によると、六十五歳以上の世帯の消費支出額は〇七年で全世帯平均の八六%の水準(無職世帯に限っても八二%)。支出額は二五―三四歳の世帯とほぼ匹敵する。
 こうした高齢者の消費には、フローの所得よりもストックの資産価格が影響しやすい。株価などが上がれば、安心して資産を取り崩しやすくなるからだ。
 このところの消費の伸び鈍化は勤労者の所得伸び悩みよりも、株安が響いたとの見方も少なくない。
 住宅バブル依存の米景気のもろさを笑うのは簡単。だが、日本も内需の核となる消費の器を広げるには、自宅を担保にした借り入れで生活資金を得て、死亡後に住宅売却で返すリバースモーゲージの普及など、資産の活用も重要になる。(編集委員 実哲也)