20080423 日本経済新聞 地方経済面

 東京都は二〇一二年度末までに長期入院する高齢者向けの療養病床を〇六年比で約七千床(約三三%)増やして約二万八千床とする計画を策定した。国は社会保障費用の抑制に療養病床を削減する方針だが、家族のケアが手薄な高齢者のみの世帯の増加や、都外に入院している高齢者の受け入れに備えるため、増設を目指す。ただ都の計画と民間医療機関の増床を促す具体的な支援策のギャップは大きく、国の方針に逆行して整備が進むかは不透明な状況だ。
 都福祉保健局によると、〇六年十月時点の都内の療養病床数は約二万千。医療保険が適用される医療療養病床が約一万三千百、介護保険適用の介護療養病床が約七千九百あるが、高齢者十万人当たりの病床数は全国平均より四割弱も少ない水準にとどまる。都内の高齢者は今後急増する見通しで「高齢者数の増加に連動し、長期療養が必要な高齢者も増える」(同局)とみる。
 一方、国は療養病床への「社会的入院」が医療費膨張の一因として、全国の介護療養病床を一一年度末に廃止するなど、療養病床を大幅に減らす方針を打ち出した。国の方針に従い、多くの県が療養病床の大幅な削減計画を策定している。
 国や他県の方針と一線を画し、都が療養病床を増やす目標を設定する背景には、都外に入院する高齢者の存在がある。〇五年時点で、都外の療養病床に入院する都民は推計で約五千二百人。他県が療養病床の大幅削減に踏み切れば、こうした高齢者が「都内に戻ってくる可能性が高い」(同局)。高齢者だけの世帯が今後増える中、療養病床を上積みしなければ、他県から戻ってくる高齢者を受け入れられない事態も予想される。
 増設計画の初年度にあたる今年度、都は医療保険適用の療養病床を増やす医療機関に対し、施設整備や改修などを行うための補助金を約三億二千万円計上した。ただ、増床予定数はわずか三百で「改修費の補助だけでは手薄だ」(都幹部)との声もある。
 ▼療養病床 病気などで長期間の療養が必要な高齢者を受け入れる医療機関のベッドのこと。治療の必要性が低いのに、受け入れ家族がいないなどの理由で「社会的入院」を余儀なくされる高齢者も多数含まれるとされる。

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