20080421 日本経済新聞 朝刊

 個人金融資産を「投資を通じてもっと上手に動かそう」と旗を振る渡辺喜美金融相。個人マネーの「潜在力」を聞いた。
 ――なぜ「貯蓄から投資へ」なのですか。
 「日本の個人金融資産の半分は預貯金です。マネーが資本市場に向かわず、預貯金に塩漬けになったままでは、いつまでたっても自分が豊かになったと実感できません」
 「いま世界では金融資産がものすごい勢いで膨らんでいますが、日本はこぢんまりとしたまま。これでは経済も活性化しません。預貯金を投資へいかに回すか。これは極めて大事なテーマです」
 ――家計は投資のリスクを嫌うようです。金融市場の混乱で預貯金、あるいは現金といった安全資産に逃げる傾向も。
 「リスクをとるということは、リターンが大きくなるということです。相場の変動はあるでしょうが、長期で保有していれば経済成長の果実を享受できるのが株式投資です。預貯金はリスクは小さいですが、一定の利子しか入ってきません」
 ――家計が投資に動き出す効果とは?
 「市場を通じて企業に成長資金が回るようになれば、経済活動の効率が上がり企業収益も拡大します。長期でみれば、企業や経済の成長がまさに自分の家計の収益に直結するわけですね」
 ――逆に預貯金偏重が続くとどうでしょう。
 「成長の果実が得られないと、家計の暮らしは苦しくなっていくでしょうね。戦前の日本では投資家が産業界に資金を出していました。祖先は立派にリスクをとってお金を供給したのですから、日本人がリスクをとらないというのは俗説です」
 ――投資の妨げになる制度もあるのでは。
 「税制は重要なポイントです。投資活動が税制でくるくる変わることのないように、制度を考えていく必要があります」
 ――金融商品取引法の施行で一部の金融サービスの提供が鈍りました。
 「コンプライアンス(法令順守)不況ではないかと、ずいぶん苦情を受けました。金商法を順守するためといって過剰反応するのは法律の趣旨ではありません。投資家保護などにつながっていないようなら、朝令暮改を恐れずに改めるのも大事です」
 日本の個人金融資産は約1600兆円。うち株式・投資信託は11%と米国の28%に見劣りする。一因は日本人の安全運用志向の強さだ。家計が潤うには、まずこのマインドをほぐしていく必要がある。(T)


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