20080420 日本経済新聞 朝刊

 四月に始まった後期高齢者(七十五歳以上)を含む高齢者医療制度を支えるため、全国の健康保険組合に今年度、新たに三千億円以上の負担が発生する見通しとなった。高齢者が加入する医療保険に対し、健保が支援金を出す仕組みを政府が導入したためだ。各健保は保険料の引き上げや積立金の取り崩しで対応することになり、加入する会社員の保険料が上がる可能性もある。(健康保険組合は3面「きょうのことば」参照)
 健保は大企業の会社員とその家族が加入する医療保険。約二年前に成立した医療制度改革関連法に、高齢者医療保険を支える健保の負担が増える仕組みは盛り込まれていたが、具体的金額が明らかになったのは初めて。
 高齢者医療制度では特に、七十五歳以上の後期高齢者自身が納める保険料が注目されているが、六十五歳以上の新制度全体を支えるためにサラリーマン世帯の負担も重くなりかねない実態が浮き彫りになった。
 市町村が運営し、自営業者などが加入する国保には六十五―七十四歳の高齢者が千百万人以上いて、加入者全体に占める割合は二八%と健保(二%)に比べて高い。高齢者が多いと医療費も膨らみやすく、全国の市町村は約三千六百億円の税金を投入するなどして保険料を低く抑えている。
 しかし、保険を支える財源としてはそれでも不十分なため厚生労働省は今年度から、六十五―七十四歳の割合が低い健保が、割合の高い国保に支援金を出す仕組みを導入した。これまでも健保を脱退した退職者や七十五歳以上の医療保険を支援してきたが、対象を六十五歳以上に広げた結果、負担は三千億円以上の純増となる。
 厚労省は五月に各健保の負担金を正式決定し、社会保険診療報酬支払基金を通じて全国の健保に通知する。財政状況の厳しい一部の健保には負担を軽減する。
 中小企業の従業員が入る政府管掌健康保険にも数百億円の負担が発生する見通し。国保の財政負担は軽くなり市町村はその分、税金を投入しなくて済む。これとは別に、厚労省は政管健保への国庫負担のうち七百五十億円を健保に肩代わりさせる特例法案を国会に提出しており、成立すれば健保への新たな負担は合わせて四千億円以上になる。
 健保は積立金取り崩しや保険料引き上げで対応する。人材派遣会社約四百社が共同で設立した「人材派遣健康保険組合」は今年度、保険料率を六・一%から七・六%に上げた。保険料は平均で月約千八百円上がる計算だ。
 セブン&アイ・ホールディングス傘下の二十八社で構成する健保も保険料率を六・三%から七・二%に上げる。厚労省によると、健保全体の積立金は二〇〇七年三月時点で四兆三千億円あり、取り崩して賄える健保もある見込みという。


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