20080415 日本経済新聞 夕刊

 七十五歳以上を対象に四月に始まった後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の保険料を徴収するため、厚生労働省・社会保険庁は八百三十二万人を対象に十五日支給の年金で初めて保険料を天引きした。高齢者への周知徹底は十分とはいえず、一部の自治体には朝から問い合わせが相次ぐなど混乱の中でスタートした。福田政権初の国政選挙となる衆院山口2区の補欠選挙も同日告示され、ガソリンの暫定税率の復活に加え、年金天引きも争点に自民、民主両党が激突する。
 厚労省は十五日、新しい保険証が届いていない人が四万五千人いることを明らかにした。福田康夫首相は同日、制度が混乱していることについて記者団に「新しい制度で(加入者は)まだなれていない。市町村は丁寧な説明をしてほしい」と述べ、周知徹底に関して地方自治体を指導する考えを示した。
 舛添要一厚生労働相は十五日の閣議後の閣僚懇談会で、年金天引きについて「保険料を金融機関で支払う手間や行政の徴収コストを省くことができ、保険料も七―八割の人は下がる」と強調。今後は制度の周知徹底に注力すると説明した。厚労相はその後の会見で「実施の責任は自分にあり、国民に迷惑をかけて申し訳ない」と陳謝した。
 これに対し、民主党は十五日の厚生労働部門会議で、後期高齢者医療制度の廃止を求めていく方針を確認した。同党の菅直人代表代行は十五日午前、山口県岩国市での演説で「年金を払う方をちゃんとせず、とる方ばかりやるのはおかしい」と批判した。
 約二万二千人が対象者となる東京都墨田区では十五日、後期高齢者医療の担当者が朝から対応に追われた。午前八時半の受け付け開始から一時間半で約百本の電話がかかっており、全部で十本ある電話のうち常時四、五本で応対した。「なぜ年金からの天引きなのか」「なぜ保険料が上がるのか」といった不満や苦情が多く、「十五日も同様の問い合わせが続いている」(国保年金課)という。
 七十五歳以上の高齢者は約千三百万人いるが、年金額が年十八万円未満の人などは天引きの対象外。会社員の子供らに扶養されている高齢者も九月までは保険料が免除されるため、天引きは十月から。
 また、横浜市など三十一の市区町村は準備不足から天引きそのものを十月以降に延期した。
 年金は二カ月分がまとめて支給されるため、保険料も二カ月分まとめて天引きする。保険料の額は居住する都道府県や所得によって異なる。全国平均は月六千円で、二カ月分だと一万二千円になる。


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