20080416 日本経済新聞 朝刊

 厚生労働省は十五日、七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度(長寿医療制度)の保険料を初めて年金から天引きした。対象者は八百三十二万人。舛添要一厚生労働相は「保険料を金融機関で払う手間を省くことができ、保険料も七―八割の人は(国民健康保険に比べ)下がる」と説明する。だが東京など大都市では保険料が上がる例も目立ち、自治体の窓口に高齢者が説明を求めて押し寄せるなど現場の混乱は続いている。(1面参照)
 新制度の特徴は市町村の運営する国民健康保険などに入っていた七十五歳以上のすべての高齢者を都道府県単位で運営する広域連合に移してまとめて管理する点にある。
 高齢者の比率が高く保険財政の苦しい過疎の自治体と、比較的ゆとりのある都市部の自治体とでは国保の保険料に五倍程度の格差があった。運営の単位を市町村から都道府県に広げることで格差は二倍程度に縮小する。保険財政が安定するようにし、全国民が医療保険制度に加入する皆保険を維持するのが新制度の最大の狙いだ。厚労省は「若い世代の負担が膨らみすぎないように設計した」と説明している。
 厚労省は新制度への理解を求めて同日の自民党と民主党の会合で保険料の試算を公表した。国保から新制度に移ると、独居世帯では基礎年金受給者(年七十九万円)で年額三万三千百円だった負担が一万二千五百円に、平均的な厚生年金受給者(年二百一万円)の場合で年額九万一千九百円だったのが六万九千九百円にそれぞれ減る。
 夫婦ともに基礎年金を受給している世帯では、保険料の負担額が年額四万円から二万五千円になる。夫が平均的な厚生年金を受給し、妻が基礎年金を受けている世帯では、十一万三百円から十万三千百円に下がる。
 厚労省は平均的な世帯で負担減となる理由を「国保の保険料は資産に応じ負担する資産割や、世帯ごとに課す世帯別平等割があったが、新制度にはないため」と説明。中・低所得者の保険料負担は平均すれば下がる。
被扶養者も負担
 一方で夫の年金収入が三百七十万円で妻が百五十三万円以下の場合でみると、国保の場合、世帯で支払う保険料は年額二十四万一千四百円。この世帯は新制度でも保険料はほとんど変わらない。ただ試算数字はすべて全国平均を使っており、地域によってばらつきも多い。
 厚労省は新制度で保険料が上がる世帯の試算は示さなかったが、上がるパターンは大きく分けて三つある。
 第一は、夫婦の年金収入が年額五百二十万円を超すケース。収入が増えるほど保険料も上がる。第二に、東京二十三区や名古屋市、仙台市など三十九の自治体に住む高齢者の保険料も上がる可能性がある。これらの自治体では、中・低所得者向けに独自に保険料負担を軽減する制度を導入していたが、広域化し都道府県単位になったことで従来のような手厚い支援がとれなくなった。
 第三は、息子や娘が会社員で被扶養者として加入していた高齢者だ。これまで保険料負担はなかったが、十月からは負担を求められる。こうした制度変更を厚労省や自治体が丁寧に説明してこなかったことも混乱につながっている。
【図・写真】「後期高齢者医療」の相談窓口を訪れたお年寄り(15日、東京・文京区役所)

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